指導者の言いなりサッカーに未来はあるのか?「ミスしたから交代」なんて言語道断。育成年代において重要な子供との向き合い方
“サッカークラブはサッカーをするところ”
スタート地点として、サッカーは単なるボールゲームではない。これは欧州における基本的なサッカーのとらえ方だ。選手がボールを扱うスキルを高めることだけでなんとかしようというスポーツではない。グラウンド全体をとらえて、味方と相手の位置や力関係を考慮して、どのように結びつき合ってゴールへ近づき、ゴールの可能性を高めるのか、守備では相手をどのようにゴールから遠ざけ、どのようにボールを奪い、どのように失点の可能性を低くするのかを考えるチームスポーツだととらえられている。 だから、例えば子どもたちのトレーニングでリフティングばかりをすることもない。元ドイツ代表で筆者の指導者仲間であるDFルーカス・シンキビッツは「リフティングが必要ないとは言わない。アップの一環で10分くらいやる分には問題ない。でもリフティングがサッカーをする機会を奪うことはあってはならない。リフティングができないと他の練習ができないとか、試合に出さないというのは完全にNGだ」と一喝していたのを思い出す。 大げさでもなんでもなく、ドイツにおいて練習のほとんどがリフティングで終わるとか、リフティングの回数でレギュラーを決めるなんてことがもしあったとしたら、子どもたちや親からものすごいクレームが集まり、育成部長から厳重注意を受けることだろう。場合によっては解任というケースだって考えられる。理由はシンプルで明確だ。“サッカークラブはサッカーをするところ”だからだ。 ボールコントロールやパスやドリブル、シュートといったスキルが必要ないなんてことではもちろんない。丁寧なスキルトレーニングはとても大切だ。ただあらゆるスキルはサッカーというゲームへのつながりがある形でトレーニングも行われることが求められる。そのためドイツではそれぞれの年代や成長段階に応じた試合形式が考慮されるし、幼稚園児から3対3といった少人数でのゲームを何度も何度も繰り返している。