スタートした「マイナ保険証」一本化 そのメリットと懸念点を整理する
どういうメリットがあるのか?
そもそも保険証をマイナンバーカードと一体化することで、どういうメリットがあるのか、いまひとつちゃんと国民に説明されていないように思える。 まず医療機関では、受付時に患者の保険情報を確認する必要がある。一般の人は医療費が3割負担になっているが、のこり7割は健康保険機関から支払われるわけである。このため、その人の保険情報、つまりちゃんと保険に入っていて、資格が失効していないかを確認する必要がある。 この確認作業は、これまで受付の医療事務員が保険番号をPCに入力して保険機関のデータベースに照会し、資格確認を行っていた。まあ、ある意味手作業である。これを効率化しようということで、マイナンバーカードの本人確認とともに保険番号を読み取り、自動でデータベースに照会して確認するという、オンライン資格確認が21年10月にスタートした。早いところでは、もうこのころからマイナ保険証が使えたというわけだ。 これまでは入力ミスなどで資格確認できず、エラーになって差し戻されたりしていたわけだが、そうなると患者側の10割負担となり、トラブルとなるケースもあった。こうしたヒューマンエラーを減らして医療手続きを軽減できるというメリットがある。 またこれまでの保険証だけでは本人確認が難しく、他人の保険証を使って診察を受けるような不正も可能だったわけだが、そこにマイナンバーカードの本人確認機能を使う事で厳格化できるというメリットもある。 一方で利用者側のメリットはなにか。それは、過去処方された医薬品の情報や、特定健診の情報などが、何もしなくても医療機関に提供できるという事だ。薬の名前や、手術時の正確な病名などはなかなか覚えていられないものだが、診察に必要な情報が正確に渡されることで、対処精度が上がる事になる。 これまで診察記録とは別に、投薬情報はお薬手帳で管理するなど、医療情報があちこちバラバラだったものが、一本化されるというメリットがある。また子供の予防接種履歴などは、現在母子手帳で管理されているが、こうした接種履歴も将来的には統合される見込みだ。 さらに12月9日からは、救急医療時の医療情報が閲覧できる制度がスタートする。救急現場では、意識のない患者から得られる情報が乏しいことから、治療法を選ぶ上で大きな障害になっていた。今後は救急搬送された場合に、意識がなくてもマイナ保険証があれば、受け入れ病院は本人の同意なしに医療情報を閲覧することができる。25年度中には、救急車の中でも閲覧できるようになる見込みだ。救命率の向上や、後遺症の少ない治療が期待できる。 また「高額療養費制度」への対応が楽になるというメリットもある。この制度は、医療費が高額になった場合、保険機関へ申請することで、一定の払い戻しが受けられる制度である。ただし、いったんは医療費を自費で支払う必要がある。要するに後精算なわけだ。あらかじめ高額になる事が分かっているならともかく、突然事故に合って大手術が必要になったといった場合には、一時的にしろ多額の医療費が請求される事になる。 先に払うのは負担が大きいということで、この制度の利用を事前に申請することもできる。これは各保険機関に申請書を提出し、事前に「限度額適用認定証」を発行してもらう。もし医療費が高額になった場合は、この認定証を提出すれば、最初から高額療養費制度が適用された金額だけ支払えばよくなる。 筆者も一度、この認定証請求をした事がある。申請して1週間程度で届くのだが、期限が1年間しかないので、毎年申請しなければならない。まあまあ面倒だし、忘れる。 だがマイナ保険証を使えば、受付時にこの「高額療養費制度」の適用をその場で選ぶ事ができる。思いがけなく医療費が高額になっても、事前申請の「限度額適用認定証」を持っているのと同じ扱いになるのだ。これは転ばぬ先の杖として、メリットが大きい。