猫専門の動物病院を経営する女性獣医師 「刑事のように質問し、病気を突き止める」
動物が好き、動物と関わる仕事がしたいと考える人にとって、獣医師という職業は憧れです。けれども、飼い主にとって家族である動物の生死を取り扱うことは厳しい仕事で、大きな責任が伴います。可愛い動物と触れ合える喜びだけでは務まりません。猫の専門院を開業した女性獣医師に、学生時代の学びと仕事のリアルについて聞きました。獣医師になるには、どんなことが大切なのでしょうか。(写真=「むさし小金井キャットクリニック ねこの病院」木村奈美院長、本人提供) 【写真】自宅では5匹の猫と1匹の犬に囲まれて暮らす。猫のごまたまちゃん(左)と昨年亡くなったあわたまちゃん(右)
女子学生が多い獣医学部
理系のなかでも獣医学部は、難易度や倍率が高いことで知られています。2024年入試の倍率を見ても、北海道大学獣医学部(共同獣医学課程)は前期4.7倍、後期7.7倍、麻布大学獣医学部獣医学科は26.0倍、日本大学生物資源科学部獣医学科は27.9倍となっています。 東京都小金井市にある猫専門病院「むさし小金井キャットクリニック ねこの病院」の木村奈美さんは、日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)獣医学科に指定校推薦で入学しました。 「私が高校生だった1990年前後は、獣医学科は今ほどの人気はありませんでした。生物の勉強が好きだったので、生物の教師になれたらいいなと思い、指定校推薦で行ける大学を探していたときに目に留まったのが日大の獣医学科でした。ここなら生物について学べる、関わっていけると思って志望しました」 獣医師になるには、獣医関連学部のある大学で6年間学び獣医師国家試験に合格する必要があります。木村さんが卒業した日大獣医学科のカリキュラムでは、全学科共通の教養教育科目と基礎専門科目を学びながら、獣医学の基礎、病態、応用、臨床の4領域にわたる専門科目を1年生から履修していき、6年生で学びの成果を卒業論文としてまとめます。日大生物資源科学部ホームページによれば最近の日大獣医学科の女子比率は約6割で、女子が多い学科です。木村さんが大学生だった30年ほど前は半数ぐらいが女子でした。 「研究室の当時の仲間は今でも仲良く、家族ぐるみの付き合いが続いています。この絆はたぶん、卒論と国家試験の2本立てで大変だった時期を一緒に乗り越えたからでしょう。大学時代を振り返っていちばん思い出すのが、みんなでいっぱい勉強したことです。国家試験の過去問で、わからないところを教え合いました。楽しかったのは実習の時間です。ホタテの黒い部分にどれだけの毒素が入っているか抽出したり、サバからアニサキスを取ったり。実習で使ったホタテは絶対食べるなと言われているのに、焼いている学生がいたりして(笑)、そういった、たわいもない実習中の出来事が楽しかったですね」