猫専門の動物病院を経営する女性獣医師 「刑事のように質問し、病気を突き止める」
お別れのときに、生き方が表れる
獣医師は木村さん1人で切り盛りしているため、入院中の重症の猫がいるときは、夜中もクリニックに行って様子を見なければならないなど、大変なこともあります。 「本当につらいのは、かわいがっていた猫ちゃんやワンちゃんとの別れです。以前、猫ちゃんが亡くなったときに飼い主さんが、『今まで一緒にいてくれてありがとう』と声をかけるのを見て、悲しみの中にいるのに、すごいなと思いました」 「また、別の飼い主さんで、猫ちゃんが治らない病気だとわかったときに、『苦しみ続けるなら延命治療はせず、楽にしてあげたい』と言った方がいました。飼い主さんとしては、できるだけ長く一緒にいたいはずなのに、自分の気持ちをこらえて楽にしてあげたいと思えるのは強い人だな、こんな飼い主なら猫ちゃんは幸せだろうなと思いました。 また別の飼い主さんは、亡くなった猫ちゃんに『また会えるよね、毛皮を変えて会いに来てねと言って別れた』という話をしてくれたことがありました。お別れのときに、飼い主さんの考え方や生き方が表れるんです。日々の仕事のなかで、人生勉強をさせてもらっています」 獣医学部で学ぼうと考える学生に大切な資質として、動物と接するだけではなく、飼い主の気持ちに寄り添うことが求められます。「獣医師を目指す人は、日頃からいろんな本を読んで想像力を膨らませることや、コミュニケーション能力を高めることをお勧めしたいですね」
朝日新聞Thinkキャンパス