猫専門の動物病院を経営する女性獣医師 「刑事のように質問し、病気を突き止める」
猫専門の動物病院を設立
獣医学部・学科を卒業すると、どのような仕事に進むのでしょうか。国家試験に合格し、獣医師免許を取得した後は、公務員として空港の検疫や動物愛護センター、食肉衛生検査所などに就職するほか、製薬会社や大学院で研究職に就く人もいます。とはいえ、やはり多いのが、動物病院の勤務です。たとえば、麻布大学獣医学部の過去5年の卒業後の主な進路は、動物病院が64%を占め、多くが臨床獣医師の道を選んでいます。 木村さんも卒業後は動物病院で獣医師として働き、30歳で大学の同級生の夫とともに独立開業。10年前、分院として猫専門の動物病院を開きました。 「猫ちゃんは怖がりで、ワンちゃんが苦手な子が多いんです。毎年春の動物病院は狂犬病ワクチン接種をするワンちゃんで混雑しますが、ワンちゃんだらけの病院で1時間待っている間に、恐怖で熱が出る猫ちゃんもいるほどです。そんな猫ちゃんたちを見るたびに、猫は猫だけで診てあげられたらいいなと思い、猫専門の分院をつくることにしました。 ほかの動物病院では診てもらえないような怖がりの猫ちゃんも、ここでは診てもらえると飼い主さんによく言われます。初めて採血できたと喜ぶ飼い主さんを見ていると、猫専門の病院をつくってよかったと思います」
獣医師に必要なのは、コミュニケーション力
「ワクチン接種で生後8週齢、12週齢といった子猫たちに会えるのは獣医師ならではの役得」と笑顔で話します。猫の飼い主との向き合い方は今でも日々学んでいることの一つです。 「動物病院の獣医師は、動物とだけ向き合っていればいいわけではありません。つらい気持ちを抱えてやって来る飼い主さんがどうしたいのかをくみ取って寄り添い、治療をする必要があります。 猫ちゃんは話すことができないので、どのような症状なのかを飼い主さんから聞き出すことが大事ですが、飼い主さんのほうも気が動転してしまって、うまくいかないときがあります。そんなときは、刑事のように質問を重ね、推理して病気を突き止めます」 飼い主に寄り添いながら、状況を想像して、病気を突き止めることが必要です。