日本だけじゃない! 世界各地で「オーバーツーリズム」が紛糾中!!
それはそれでいいことのように思えるが? 「ただ、ニセコがこうなった背景には、早い時期から外国の資本が入り、外国人の経営による外国人向けの宿泊施設やレストラン、各種サービス業が営まれていたことを忘れてはいけません。つまり外国人観光客が日本に来て使ったお金が外資により回収され、地域への経済効果が限定的になってしまうのです。 実際、オーバーツーリズムが進んだ海外では、地域の商店街が『観光客が好きそうなお土産物を並べる店』『観光客受けするレストラン』に取って代わり、もともとあった地域のコミュニティや文化が消え去ってしまっている所があります。 こうしたことが外資によって行なわれると、もともと住んでいた人にとっては暮らしにくい土地になり、地域のコミュニティが破壊され、空洞化してしまうのです。 ヨーロッパのスイスやデンマーク、アジアではインドやタイ、フィリピンなどといった国とは違い、日本では外資による土地の取得に制限が課せられていないこともあり、こうした事態が急速に進むことも考えられます。日本の有名観光地が"ニセコ化"しないよう、対策をきちんと取るべき時期に来ていると思います」 日本観光がそんな不幸な終着点に行き着くことがないよう、行政には先手先手の対応が求められる。 ●立教大学観光学部准教授 西川亮(にしかわ・りょう)1985年生まれ、東京都出身。東京大学工学部都市工学科、同大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了後、(公財)日本交通公社に研究員として勤務。2018年に博士(工学)取得後、立教大学観光学部助教を経て、2021年から現職。専門は観光まちづくりや観光政策、都市計画。主な著書に『観光地経営の視点と実践』(丸善出版、共著)、『ポスト・オーバーツーリズム』(学芸出版社、共著)、『都市を学ぶ人のためのキーワード事典』(学芸出版社、共著)など 取材・文/植村祐介 画像/PIXTA 時事通信社