日本だけじゃない! 世界各地で「オーバーツーリズム」が紛糾中!!
直近の例では、チリ人姉妹のインスタグラマーが神社の鳥居で懸垂をするなどの動画を投稿し、多くの非難の声が上がった。 「このような『過度の観光地化によって、地域住民の生活環境や観光客の観光体験に悪影響を与える状態』を、オーバーツーリズムといいます。これは日本だけに限らず、世界各地の著名な観光地の多くが直面してきた課題です」 そう語るのは、立教大学観光学部准教授の西川亮氏だ。 「オーバーツーリズムは2010年代後半から、バルセロナ(スペイン)、ベネチア、ローマ(共にイタリア)、ドブロブニク(クロアチア)、ハルシュタット(オーストリア)などの都市で発生してきました。 観光というのは、外部から人が来て、食事や買い物、宿泊にお金を使ってくれることで、地域の経済の活性化に役立つだけでなく、異文化の交流という目に見えないメリットをもたらしてくれます。しかしオーバーツーリズムは、そうしたメリット以上に市民生活などへの悪影響が生まれるため、放ってはおけない状態なのです」 ■世界の観光地でも問題大量発生! 海外の都市では、どんな問題が発生したのだろうか。 「例えばベネチアでは、クルーズ船で来訪する観光客が問題となりました。その巨体が街並みには似つかわしくないことに加え、クルーズ船の観光客は、日中は街中を散策しますが、夜は船に戻ってしまいます。 そのため、街中の混雑を引き起こす一方で、経済への効果は限定的だったのです。また、クルーズ船を利用しない観光客も増加したことが、住宅の『民泊化』を引き起こし、既存のアパートの家賃が急騰、地元住民は住み続けることが困難になりました。 ローマではスペイン広場で映画『ローマの休日』をまねて階段に座りジェラートを食べる観光客があふれ、通行もままならない上、ゴミを散らかし、美観を損ねる状態になりました」 なるほど。となると、なんらかの対策が必要だが......。 「当然、こうした課題に直面した各都市、地域は対応に頭を悩ませることになります。具体的な対策として挙げられるのは、観光客の時間的・空間的な分散に向けた施策、つまり近隣の別の観光地へ誘導したり、時期や時間をずらしての来訪を促すような働きかけです。 しかし観光客の多く、例えば10人いたら8、9人は特定の時期や時間に特定の場所に行きたいという思いがあるため、これがなかなか簡単ではないんです。 また来訪者の抑制のための宿泊施設の規制は、陸続きであれば近隣地域に宿を取ることで骨抜きにされちゃいますし、観光地にとっても宿泊という要素がなくなるので、経済への効果が限定的になってしまうというデメリットがあります」