日本だけじゃない! 世界各地で「オーバーツーリズム」が紛糾中!!
やはり諸外国も、日本と同じ悩みを抱えていたわけだ。 「富士河口湖町のローソンの問題に似た例では、先ほど挙げたハルシュタットが同様の取り組みを行ないました。ハルシュタットは山沿いの村で、アニメに出てきそうな美しい山々に抱かれた街並みが美しい"映えスポット"です。 ここも、同じ撮影ポイントに観光客が殺到したため、目隠しの柵を設置したんです。しかしあまりにも不評で、数日で撤去することになってしまいました」 となると、なかなか有効な対策はない? 「わずかな成功例のひとつは、ドブロブニクのケースです。アドリア海に面したリゾートとして知られるこの街の課題は、ベネチアと同じく大型クルーズ船の来港でした。 多いときには1日5、6隻のクルーズ船が来港し、街は観光客であふれてしまっていたのです。そこで街は行政指導を行ない、来港を1日2隻までに絞りました。 ただこれは、主たるターゲットが船に限定されていたからできたことであって、一般化するのはなかなか難しいと思います」 もちろん、こうした過度の観光客の来訪が地元民のネガティブな行動を引き起こすケースも少なくないという。 「同じくオーバーツーリズムに悩むバルセロナでは、地元住民が物価の高騰に抗議するため、観光客に水鉄砲で水を浴びせるという抗議活動を行ない、世界的なニュースとなりました。 ただ、こうした行動は、その街の評判を落とすことにもなります。それでも観光客が減ればいいという考え方もありますが、一方で観光の持つ経済振興や異文化との交流というプラスの面も同時に捨て去ることになる。難しい問題です。またこれが過熱すると、レイシズム(人種差別)にもつながりかねません」 ■一極集中から分散型の観光地へ では日本は、このオーバーツーリズム問題にどう対応すればいいのだろうか。 「宿泊税を徴収するなど、金銭的なハードルをつくることもできますが、行動の抑止力としては弱いと思います。地道な活動ではありますが、有名な観光地以外でも地域住民と共に各地域が魅力を掘り起こしていき、先に述べた空間や時間の分散を粘り強く進めるしかないと思います。 その取り組みを現在行なっているのが、京都府です。京都府の観光はどうしても京都市内およびその周辺の神社仏閣に集中していますが、これに対し『海の京都』『森の京都』『お茶の京都』をテーマに、京都が内包する別の魅力を訴えようと、地域資源を発掘してPRしています。 このように一極集中している所を減らして観光需要を広いエリアに分散させれば、オーバーツーリズムを防ぎつつ、観光の持つ経済振興と異文化交流を享受することができると思います」