園の先生が実践している 「見取り」って? 子どものささやかな成長を見逃さないスキル
子どもの成長の瞬間は、何気ない遊びの中に隠れています。しかし、それを見逃さず捉えるのは、意外と難しいもの。 勉強以外の生きる力・3つの非認知能力とは? こども園や学童保育所の先生たちが実践する"見取り"を参考に、子どもの遊びを新たな視点で観察する方法を、中山芳一先生の著書『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』より抜粋して紹介します。 ※本稿は、中山芳一著『マンガでやさしくわかる非認知能力の伸ばし方』(日本能率協会マネジメントセンター)から一部抜粋・編集したものです。
非認知能力レンズを使って見取ってみよう!
みなさんは、こども園の先生たちや学童保育所(放課後児童クラブ)の先生たちのお仕事ぶりをご覧になったことはありますか? こども園や学童保育所の優れた先生たちは、一見、子どもたちと一緒に遊んでいるだけのように見えて、その中で子どもたちのちょっとした出来事を見逃さずに、そのときどきで対応したり、あったことをお迎えのときの保護者に伝えてくれたりしてくださいます。 じつは、これってとても難しいことなのです。 たとえば、学校で授業をするときには、授業の目標が明確にあって、その目標に対して子どもたちがどのような状況なのかを教師は見ていきます。 わかりにくそうにしていたら、この子はこの授業の目標に到達していないと気づき、わかるようになるための手助けをしますよね。 目標がはっきりしていると、何を見ていけばよいのかもわかりやすいのです。 一方、子どもたちが遊んでいる状況ではどうでしょうか? 先ほどの授業のように、はっきりとした目標はありません。 つまり、この遊びでどうしても身につけてほしい力などが明確にあるわけではないのです。 そんな目的意識みたいなものを大人側が前面に出せば出すほど、子どもにとっては遊びではなくなってしまうことがおわかりでしょうか。 なぜなら、子どもたちはただ楽しいから、ただやりたいから遊んでいるだけなのです。 遊んだ結果として、体力がついたり、技術が身についたり、なんらかの非認知能力を伸ばせたりするのであって、初めからなんらかの力を身につけることが目的にはなっていません。 そんな遊びの時間、大人たちはいったい子どもたちの何を見ることができればよいのでしょうか? この問いに対して大いに参考になるのが、先ほど説明したこども園や学童保育所の先生たちがやっている「見取り」です。 私たちの目の前で、子どもたちがそれぞれに好きなことをやっているとします。 その中で、「おやっ! あの子ってこんなことができるようになったんだ!」とか「あの子たち、仲よくなってきたなぁ!」とか「最近、あの子は元気がないなぁ……」とか……いろいろなことに気づけるのが、教育や保育、福祉の従事者のような専門職の方々です。 さらに、その上でどうしてあの子ができるようになってきたのだろうか、あの子の元気のなさは何が原因なのかなどについて探ることもできるだけでなく、今後はどうやって関わっていけばよいのかなどの見とおしを持つこともできてしまいます。 もう少し言うならば、優れた先生であればあるほど、ほかの人には気づかないことにも気づけたり、理由や原因の探り方も、関わりの見とおしについても深みがあったりします。 もちろん、これは優れた学校の先生たちにも同じことが言えるでしょう。