園の先生が実践している 「見取り」って? 子どものささやかな成長を見逃さないスキル
なぜ、こうした先生方にはこのような見取りができるのでしょうか? じつは、私たちは自分にとって重要だと思った情報を選択して、そこに注意を向けているってご存じでしたか? たとえば、普段は道路を走っている車に対して特別な注意を向けていなかったのに、今度、新車の購入を決めたとなると、急にその購入予定の車が町中を走っていて、やたらと気になった経験はありませんか? これは、私たちの中に当たり前のように備わっている脳の機能なのです。 この機能を上手に活用して、あらかじめ自分の中で何に注意を向ければよいのかをはっきりさせていくと、ほかの人たちには気づけないことでも、気づけるようになります。 このあらかじめ自分の中で注意を向けるように設定したものを、観点とかレンズと呼んでいます。 このレンズさえあれば、子どもたちが何気なく遊んでいる中であっても、その子のちょっとした素敵なところや成長、逆に気がかりなところに気づけるようになるでしょう。 つまり、みなさんがあらかじめそのレンズを持っておくことが大切になってくるわけですが、ここでおすすめなのが、3つの非認知能力、つまり「自分と向き合う力」「自分を高める力」「他者とつながる力」です。 この3つの非認知能力をレンズにして、お子さんたちの遊びや日常生活の姿を見取ってあげてみてはいかがでしょうか? このときに、くれぐれも注意していただきたいのは、お子さんが何かをやったあとの結果ではなく、常にお子さんが何かをやっているときのプロセス(過程)で見取ってあげてください。 得てして、結果は「できた/できなかった」という2択でしかお子さんに返すことができません。 できたときは「できたね、よかったね!」になるでしょうし、できなかったときは「できなかったね、次がんばろうね……」になるでしょう。 しかし、先ほどの見取りは、こうした結果そのものをフィードバックするのではなく、その結果に向かって取り組んでいるお子さんのいろいろな価値を見出すことなのです。 だからこそ、ぜひお子さんの行動のプロセスで、あきらめずに粘り強く取り組んでいる姿(自分と向き合う力レンズ)や積極的で前向きに挑戦しようとしている姿(自分を高める力レンズ)、友達と教えあったり励ましあったりしている姿(他者とつながる力レンズ)を見取ってみてくださいね。
中山芳一(All HEROs 合同会社代表)