「長生でもできるんだぞ!」 OB監督率いる公立進学校が見せた私学撃破の快進撃
野球好きな地元の選手たちを生かして
この春の千葉県大会ではベスト8入りを果たして、Bシードとして夏に挑む長生。 茂原市に所在する県立長生は進学校として知られている一面もあるが、定時制の学校もある。そのため、練習時間を多く確保することができず、19時には完全下校。普段は7限まできっちり授業が入っており、練習開始は16時からになるため、2時間程度しかボールを使った練習は出来ない。 【トーナメント表】戦国千葉大会 組み合わせ 指揮官・鳰川 文也監督は、「限られた時間で色んなことをやり過ぎず、明確にして取り組まないといけない」と練習に対するこだわりを語る。 長生の卒業生でもある鳰川監督は船橋東、そして浦安で指導し、母校に戻ってきて3年目となった。 「特に船橋東のときは部員数が多かったですし、豊富な試合経験を通じて野球への理解が深い選手もいた」というが、長生の場合は地元の選手たちが集まってくれるものの、部員数は少なく、中学時代に試合経験を多く積んできたわけではない。 今年のチームに当てはめて考えれば、「強豪私学相手にコールド負けにならず、9イニングを戦うところからスタートしましたので、決して力があったわけではない」という。それでも鳰川監督は、「他の学校に勇気を与えるわけではないですが、『長生でもできるんだぞ』というのを見せたい」という思いを胸に、選手たちを育ててきた。
とはいえ、ガツガツ練習を積んで、選手たちを鍛え上げるわけではない。土日は、「半日練習にしたり、休みにしたりと、1日やったことはほとんどないです」と鳰川監督は話す。強豪私学に勝つのであれば、練習を通じて選手たちを叩き上げることをイメージしがちだが、そうではない。 「普通だったら多分ありえないと思うんですよね。でも100%全力で練習に力を注いでしまうと、どこかでケガ人が出てしまうと思うんです。また野球が好きな選手たちが多いので、半日練習すれば自然と自主練習をやってくれますし、結果も出してくれているので、良い形かなと思っています。 ただ、その代わりに私のやりたい野球を理解したり、考えたりしながら野球をやるようにしています」 チームをまとめる主将・中山琉生も、鳰川監督の話す「野球が好きな選手が多く、自主練習をよくやる」という特徴に同感している。 「先輩たちと比べても、自主練習をやる選手が多いと思います。たしかに練習では『無駄な進塁をさせない』ことを考えてやっていましたけど、単純に先輩たちの時よりも練習時間をちょっとだけ長くしています。 下校時間のギリギリまで自主練習の時間を確保させてもらって、目一杯練習するようにしました。秋は自分たちはミスをきっかけに負けるケースが多いので、同じことを繰り返さないように守備には力を入れていました」