障害者のグループホーム開設を近隣住民が反対「障害者は怖い」…ダウン症の弟の姉が直面した現実は、過去の自分だった
「弟のグループホームが歓迎されなくて、家族じゃなかったらよかったと思った日のこと」 【写真】悲しむ岸田さんを慰める心優しい弟さん 作家の岸田奈美さん(@namikishida)は、数年前にダウン症の弟さんがグループホームに入居した時の話をエッセイとして公開。さまざまな困難や悲しみに直面したエピソードが、大きな反響を呼びました。
ようやく入居が決まった矢先、思わぬ反対の声
X(旧Twitter)に投稿された内容は、岸田さんが以前、noteに投稿されたエッセイ『姉のはなむけ日記~ダウン症の弟のグループホーム入居騒動~』からの抜粋です。 岸田さんのお仕事や車椅子生活を送るお母さんの住居の問題など、家族のさまざまな事情が重なったこともあり、グループホームで暮らすことを決めた岸田さんの弟さん。 施設の空きや、交通アクセス、送迎車の問題など、数々の課題に直面しますが家族で一つずつ解決してゆき、ようやく開設予定のグループホームへの入居が決まりました。 しかし、その矢先、さらなる問題が起こります。なんと、一部の近隣住民から、施設の開設について、強い反対意見が出たというのです。 「『自分たちが住んでいる地域に障害者がいるなんて、気持ち悪いし、トラブルがあったら怖いから、といわれてしまって……』 気持ち悪い。 まったく予想できない言葉ではなかった。 昔っから、言うてくるヤツはおったしな。なんも知らんねんからしゃーない。 けど、まさこのタイミングで言われると思っていなかったので、絶句してしまった (岸田さんの投稿より引用)」 グループホームは自治体からも承認され、近隣住民の方々への説明も済んでおり、来月には開設する予定でした。にもかかわらず、ここにきてそんな反対の声が上がるとは…、岸田さんは驚きます。 施設担当者の話によると、「庭でバーベキューをしていて、障害のある人にお肉とかをジーッと見られたりすると、家族が怖がる」というような反対理由もあったそうです。さらには、「グループホームの周りを壁と柵で見えないように囲って、カギをつけてほしい」と条件を提示する声もありました。もちろん、入居者の人権を考えると、そんなことはできるはずがありません。 岸田さんは家族として、自身の弟さんの優しく、楽しい人となりを知っていました。しかし、一方で世間には障害者に対する「怖い」「気持ち悪い」といったネガティブな印象は根強く残っています。 世間の人々に向かって、そんなことはないと説明したい。ですが、それに意味がないことも、岸田さんは知っていました。いくら強い気持ちで訴えても、世間からは「当事者の家族だから」で片付けられてしまう――。 「わたしが、家族じゃなかったら。きっと信じてもらえただろう。きみの優しさを。 ままならないこの世界で、生きていきたいという思いを。 ごめんな。 姉ちゃん、言い返せずに、ほんとにごめん。 姉ちゃんだから。 きみのことが大好きな姉ちゃんだから。 役に立てなくて、ごめん。ごめんな (岸田さんの投稿より引用)」 辛い現実に、「家族じゃなかったら、よかったのに」と岸田さんは思いました。弟さんは、悲しみにくれる岸田さんの背中をさすって、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と慰めてくれたといいます。