井上尚弥が見つけたWBO王者カシメロの弱点とは…リゴンドーとの“世紀の凡戦”僅差判定勝利後に“中指”を立て挑発も
実は、井上は、カシメロの勝利を願っていた。 「カシメロと戦いたいと思っていた。その方が盛り上がるじゃないですか。リゴンドーだと盛り上がらないし、自分のモチベーションも上がらないだろうしね」 リゴンドーはサウスポーで井上とはスタイルが違うため参考にはならないが、自らのカシメロ戦を想定しながら試合を見ていた。 「カシメロのイメージは変わらない」という。 リゴンドー戦でカシメロの弱点がさらけだされていた点を井上は見逃さなかった。8ラウンド。逃げるリゴンドーをいっこうに捕まえられず空振りを繰り返すカシメロの戦い方にあきれたように井上が「ボクシングの幅がない」と、ぼそっとつぶやいたのである。 カシメロは、左ジャブを打たず、左フックを強打していくフィリピンスタイル。だが、その左フックに対しリゴンドーは右のパンチを合わせると同時に体を回転させて完璧に封じ込んでいたのである。カシメロは、途中、左構えにスイッチしたり、L字ガードでリゴンドーに誘いをかけるなど、手を替え品を替えて追いかけたが、左フックから仕掛けて空回りするというパターンを繰り返した。井上は、放送中に「右アッパーから入るのが得策かも」と、ひとつの打開策を口にしていた。カシメロも、左右のボディ攻撃から突破口を開きかけたが、決定打を打ち込むことができなかった。 カシメロは、超攻撃的スタイルではあるが、その仕掛けはワンパターンである。入りのパンチである左フックを“リゴンドー方式”で封じれば、あとの動きは読める。怖いのはアッパーなどバリエーションのある右だけだが、リードパンチを止めれば効果は半減するし、パンチに威力はあるが、リゴンドーが見切れるほど粗い。 そしてリゴンドーと井上が決定的に違うのは、防ぐだけでなく、攻守が一体化し、同時に攻撃へ転じること。カウンターの威力もリゴンドーのそれとは違う。 井上は、番組終了後、WOWOWの特別インタビューに「もちろんそう(カシメロは攻撃的に)出てくるでしょう。だったらこっちが迎え撃つだけ。倒されるかも分からないし、こちらが倒すかもしれないし。それは戦ってみないと分からないですね」と、カシメロ戦を想定した。「倒されるかもしれない」という発言は珍しかったが、「それだけ迎え撃つ準備ができている、逃げないよということ」と説明を加えた。 カシメロか、それともドネアか。その順番こそ前後するかもしれないが、いずれにしても井上は年内、そして来春と、この2人の世界王者とのビッグマッチを2試合行い、悲願の4団体統一のストーリーを完成させることになる。 ちなみに、その後に控えるスーパー・バンタム級への転級、4階級制覇へ向けては「そのときにならないと分かりませんね。半年後、1年後のことを今決めてもなんとも言えないじゃないですか。今はバンタム級がちょうどいいし年内に1試合、来年の春に1試合して、そこで自分の体がどうなって(大きくなって)いるか、それ次第。スーパー・バンタム級のチャンピオンもチェックしていないし、今はバンタム級の2試合しか頭にありません」ということだそうだ。