井上尚弥が見つけたWBO王者カシメロの弱点とは…リゴンドーとの“世紀の凡戦”僅差判定勝利後に“中指”を立て挑発も
1ラウンドからカシメロが強烈なプレスをかけるが、リゴンドーは徹底して足を使い、サークリングをしながら逃げまくった。このラウンド、体をかがめてパンチを避けたリゴンドーが後頭部を打たれて片手をキャンバスについた。そこにカシメロが右フックを連打して追撃したが、「ノーダウン(スリップ)」と判断され、カシメロに注意が与えられた。終わってみれば、山場といえるシーンは、ここだけ。 結局、ビデオフィルムを再生するだけのようなラウンドが12ラウンド続き、ブーイングが終わらなかった。 カシメロのパンチのほとんどがよけられ、リゴンドーは、セコンドが途中「もっと手を出せ」「おまえの仕事をしろ」と怒るほどパンチを出さなかった。 WOWOWのゲスト解説だった井上が「あそこまでやられたらボクシングにならない」「全世界どこでやってもブーイングですよ」と嘆くようなリゴンドーのディフェンシブなボクシングが、ジャッジの2人から支持されなかったのも当然だろう。 米のデータ会社「コンプボックス」の集計によると、カシメロは297発のパンチを放ちヒットしたのは47発、リゴンドーは221発中44発で、12ラウンド制の試合で2人の合計的中パンチ数が91発という数字は同会社が統計を取りはじめて以来最低の数字だったという。 この試合はWBOが「WBA王者は井上でありリゴンドーではない」との判断で統一戦として認めなかった。試合の評価はどうであれ、カシメロは、そのベルトを守った。結果として過去に元3団体統一王者のワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)戦で途中棄権した1敗だけの「試合はつまらないが負けないボクサー」のリゴンドーに土をつけたのである。 試合後、この先の戦いについて聞かれたカシメロはテレビカメラの前に右手を差し出して指を3本立てた。 「相手は3人いる!」と言い、まず薬指を左手で折って「リゴンドー」、次に人差し指を折って「ドネア」、最後に中指を残して、その指を立てたまま「最後は井上」と豪語した。ご存じの通り中指を立てるのは、最大の侮辱を示すポーズである。そのシーンをモニターで見ていた井上のモチベーションに火がついた。 「最後にああいう態度をされたら。自分で叩きのめしたいと心の底から思った」 当初は、この日、ドネアとカシメロの2団体統一戦が予定されており、井上は、年末にその勝者と国内で4団体統一戦を行うプランが練られていた。だが、カシメロがドネアが求めたドーピング検査を予定されたスケジュールに沿って実行しなかったためドネア側が対戦を拒否。注目のビッグファイトは流れ、カシメロは、それ以前に計画されていたリゴンドー戦に逆戻りし、井上サイドも、次戦は年内にドネアとの再戦を最優先とするプランに切り替えていた。だが、井上の気持ちは、カシメロの挑発を受けて揺れ動いた。 「現時点では、ドネアと交渉していますが、いち早くカシメロとやりたい」 そして「問答無用で倒します」と続けた。