沖縄が「重点措置」に慎重な理由は? 観光立県が抱えるジレンマ
沖縄県では7日、新型コロナウイルスの新規感染者が155人確認された。1日の感染者数としては、感染が広がった那覇市の繁華街で集中検査を実施した昨年8月9日の156人に次ぐ過去2番目の多さだ。目下、「第4波」(玉城デニー知事)が進行中だが、緊急事態宣言に準じた措置が取れる「まん延防止等重点措置」(重点措置)の適用要請には慎重な姿勢を見せている。なぜだろうか。 [図表]「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」の違い(画像制作:Yahoo! JAPAN)
感染スピードが加速 合計1万人に
沖縄県内では昨年末ごろに感染が再拡大し、第3波が到来。1月は宮古島でも感染者が急増し、医療支援のため自衛隊が派遣されるに至った。県はこのとき、国に緊急事態宣言の対象に沖縄を加えるよう要請したが指定されず、県独自に宣言を出して対応。感染の勢いはいったん収まり、飲食店への時短営業要請も2月末に解除された。 だが、那覇市の国際通りなどに観光客らのにぎわいが戻り始めた3月中旬ごろから感染者が再び増加傾向に。玉城知事は3月29日、「第4波が到来したと言わざるを得ない」と表明。3月31日、4月2、3、7日は1日当たりの感染者数が100人を超えた。沖縄県の人口は140万人超。沖縄での100人は、東京都(人口約1400万人)のおよそ1000人に相当する。
昨年2月に県内で初の感染者が確認されて以降、今年4月7日までの累計感染者は1万194人。8千人を超えたのは2月16日で、9千人に達する3月26日まで1か月以上を要したが、そこから1万人の大台に乗る4月6日まではわずか11日間しかかかっていない。増加ペースが加速し、4月に入ってからの直近1週間の人口10万人比の感染者数をみると、沖縄県は重点措置の適用対象となった大阪府と並ぶほどだ。
長期化する経済打撃を懸念
大阪、兵庫、宮城の3府県に続き、東京都が重点措置の適用を国に要請する動きを見せる中、沖縄県は慎重姿勢を続けている。昨年から続くコロナ禍で基幹産業の観光は大きな打撃を受けており、強制力を伴う重点措置が沖縄経済に与える影響が懸念されるためだ。 沖縄県によると2020年の入域観光客数は373万6600人で、初めて1000万人を超えた2019年から642万7300人(63.2%)も減少した。最新の21年2月の観光客数は、前年同月比で79.9%減の11万8800人。19年に過去最高の293万人を記録したインバウンド(外国人観光客)は、入国制限により昨年4月からゼロが続く。 既に県は4月1日から、26ある沖縄本島の市町村のうち、感染が流行している那覇市など20市町村に対し、夜9時までの時短営業を要請している(期間は21日までの3週間)。時短に応じた店舗には協力金(21日間84万円)が支給されるがいわば「お願いベース」で罰則はない。 3月31日の記者会見で、玉城知事は重点措置を国に要請するかを問われ、「県民の行動に強く制限をかけることになるので、観光のみならず様々な分野に大きな影響を与える。慎重に判断する必要がある」と語った。同日には西村康稔(やすとし)経済再生担当相と電話し、重点措置の適用を国に要請せず、4月1日からの時短営業要請の効果を注視する考えを伝えたという。