“弱小”モンゴルから森保Jが奪った歴史的14得点の価値
前半を5-0で折り返した段階で勝負はついた。それでも、森保ジャパンの選手たちは競い合うように、モンゴル代表のゴールを目指し続けた。後半には何と9ゴールを、そのうち3つをアディショナルタイムに奪う歴史的なゴールラッシュを、無観客のフクダ電子アリーナで完遂させた。 敵地ウランバートルで予定されていた一戦が、新型コロナウイルスの影響でモンゴルのホーム戦扱いのまま、日本国内での開催が特例で認められた30日のカタールワールドカップ・アジア2次予選。日本代表が最終予選進出へ王手をかけた90分間で、24年ぶりに「ある記録」が塗り替えられた。 日本が戦ってきたワールドカップ予選における最多得点記録は、フランス大会進出をかけた1997年3月と6月に、ともにマカオ代表との1次予選であげた10ゴール。加茂周監督時代の記録をトータル14ゴールで大幅に更新しただけでなく、国際Aマッチ全体でもフィリピン代表を15-0で破った、1967年9月のメキシコ五輪アジア予選に次ぐ歴代単独2位のゴール数となった。 キックオフ前の時点のFIFAランキングを比べれば、日本の27位に対してモンゴルは190位。新型コロナウイルス禍で2次予選が長期中断を余儀なくされる前の、2019年10月に埼玉スタジアムで行われた日本のホーム戦でも森保ジャパンが6-0で圧勝していた。 「あまりにも力の差がありすぎたので難しい部分はあります。点差が開きすぎると『相手が弱かった』と言われるし、点を取れなかったら『大丈夫なのか』と言われるので」 センターバックとして先発出場し、6点差で迎えた後半19分にフル代表デビュー戦となったDF中谷進之介(名古屋グランパス)と交代したキャプテンの吉田麻也(サンプドリア)は苦笑いを浮かべながら、その後はベンチで見届けたゴールラッシュの意義をこう指摘した。 「いろいろな選手が満遍なく、最後まで緩めずに点を取ったのがよかったと思っています。新しい選手もそうですし、もちろん取るべき選手もしっかりとゴールしたのが一番よかったですね」 2018年7月に森保ジャパンが発足してしばらくは、2列目は左から中島翔哉、南野拓実、堂安律で固定されてきた。しかし、いまやヨーロッパの舞台で結果を残す鎌田大地(アイントラハト・フランクフルト)がトップ下の、伊東純也(ヘンク)が右サイドのファーストチョイスになった。 左サイドに回った南野が決めた前半13分の先制点、同26分に鎌田が決めた3点目、後半28分と34分に伊東が決めた8点目と10点目が、吉田を喜ばせた「満遍なく」に含まれている。今シーズンのヘンクでキャリア初の2桁ゴールをマークしている伊東は、しかし、味方の3ゴールもアシストした結果にも「チャンスの数からすれば、最低限かなと思います」と貪欲な視線を前へ向けた。 「相手が強くなればチャンスそのものも少なくなると思うので、そこを決め切る部分が大事になる。自分の役割は、そのチャンスをより多く作っていくことだと思っているので」 吉田が言及した「新しい選手」が、前半33分に4点目を決めた代表5試合目のMF守田英正(サンタ・クララ)、後半23分に7点目、アディショナルタイム3分には14点目を決めた代表デビュー戦のMF稲垣祥(名古屋)、同33分の9点目と42分のワールドカップ予選新記録となる11点目を決めた代表3試合目のFW古橋亨梧(ヴィッセル神戸)となる。そろって代表初ゴールとなった。