「ゲストはたくさん呼びたい」28歳新婦に”いい顔をしない”新郎が抱く違和感の原因
“自分らしさ”を追求した自由な結婚式
「社会における多様化が進むなか、結婚式業界にもその影響は強く感じます」 こう話すのは、ウエディング業界歴17年、結婚式のエキスパートの神田裕子さん。 【写真】新郎がイメージする結婚式は「格式の高い」「フォーマル」なものだった これまで5000組以上のウエディング相談実績を持つ「トキハナ」のウエディングカウンセラーだ。 全国各地の多様な式場でトッププランナーとして活動し、人材の育成や新店の立ち上げをしてきた。基本的に「リピートはない」業界であるがゆえの、不透明な見積もり、規制ずくめのドレス選び、紛らわしい広告表現など、時に違和感を持つこともあったという。 そんな業界の問題を変えたいと、2020年5月、新郎新婦ファーストの、LINEでできる式場探し「トキハナ」を立ち上げた。 神田さんいわく、「新郎新婦の価値観や個性を反映した『パーソナライズ』のニーズが、近年、高まっています。これまでの慣習にとらわれず、"自分たちらしさ"を表現できる自由なスタイルが求められるようになりました」。 特に、ジェンダーバイアスや費用負担といった従来の慣習に対する不満が、これまでの結婚式のあり方を見直すきっかけとなっているのだという。 定番や慣習を重視するより、新郎新婦の主役の気負いもゲストの負担も減らした、誰もが心から楽しめる式が主流となってきた。 そんな業界のエキスパート 神田さんが、後悔のない結婚式にするためのヒントをお伝えする連載。 今回の相談者は、28歳の女性。結婚することになった31歳の彼に、「友人をたくさん招待したい」と話すと、あまりいい顔をしないのだという。 理由を知りたくても、「関係がぎくしゃくするのが怖い」と訊けないでいるという。 ふたりの関係性にも関わるこの問題をどう解決するのか。 神田さんの寄稿でお届けする。
具体的な話になると口が重くなる彼
「実は、彼と結婚式のことで揉めてしまって……」 初めて春奈さん(仮名・28歳・会社員)が私の元を訪れたのは、夏の終わりのこと。明るい髪色とボブヘアが似合う、明るく健康的な印象の女性。しかし、その表情にはどこか影が見えました。 マッチングアプリで出会い、交際を始めて2年。半年前から同棲中というおふたり。 「結婚式は、ふたりともやる方向で考えているんですけど……」 そう前置きしながら、結婚式の準備になかなか踏み切れない理由を語り始めました。 「具体的な話になると、彼が躊躇しているように感じてしまうんです。招待したい人数や式を挙げたい時期を聞いても、曖昧な返事しかかえってこないのがどうしても不安で。」 春奈さんは、学生時代からの友人や会社の同僚など、たくさんの人に囲まれてにぎやかに結婚式を挙げたいと考えていました。 一方、新郎の祐介さん(仮名・31歳・研究職)は、物静かで人見知りするタイプ。結婚式にたくさんの人を呼ぶことに抵抗があると言います。 「もともと結婚前提のマッチングアプリからのお付き合いなので、私たちにとって結婚はごく自然なものでした。結婚式も挙げようとは言ってくれているんですが、具体的な話になると口が重くなるし、友人をたくさん呼びたいと言ったらあまり良い顔をされなくて……」 はっきりと反対されたわけではないけれど、自分と同じモチベーションでないことが気にかかっているようです。 春奈さんは、彼が釈然としない理由を直接尋ねることをためらっていました。 踏み込んだ質問をして、彼を傷つけたり、ふたりの関係がぎくしゃくするのを恐れていたのです。彼のほうも主張したり、詳細を確認したり、ということがなかったと言いますが、お互いにその話題を避けていたせいで、結婚式の話は全く進みません。どうしたら良いか分からず、彼女は途方に暮れていました。 「私にとって、結婚式はこれまでお世話になった人たちみんなに、感謝の気持ちを伝える場にしたいんです。それなのに大事な人たちが出席できないかもしれないなんて、考えただけでも辛くて……」そう語る春奈さんの目には、涙がにじんでいました。 大切な人たちに囲まれた結婚式。彼女が夢見た光景は、手の届かないものになってしまうのでしょうか。 私は、春奈さんの話をじっくりと聞きながらも、祐介さんの気持ちも知っておく必要があると感じました。