「お酒は少量なら脳梗塞のリスクを減らす?」結局お酒は健康に良いのか悪いのか…最新研究をもとに医師が解説
がんのリスクは少量のお酒でも上がる
実は、アルコールはたとえ少量でもがん(特に乳がん)のリスクを上げる可能性があるとされている。 つまり少量のアルコールが健康に良いかどうかは、動脈硬化への影響とがんへの影響の「つな引き」で決まるということである。 2018年には、この2つを組み合わせると健康への総合的な影響がどうなるのかを評価した論文が『ランセット』に掲載された。 この論文は、世界195か国で実施された592の研究を統合した大規模なもので、心筋梗塞や乳がんを含む23の健康指標へのアルコールの影響を総合的に評価したものである。 この論文によると、1日1杯ではほとんどリスクが上昇していないようなのである。 ちなみにここでの1杯とは、純アルコール換算で10gのことを指す。10gの純アルコールはグラス1杯のワインやビールに相当する。 論文によると、健康リスクを最小化する飲酒量に関して、最も信頼できる値は0杯であり、95%の確率で0~0.8杯の間に収まるという結果であった。 この結果を受けて「最も健康に良い飲酒量はゼロである」と主張している人も多いが、筆者は個人的には「1杯までであればリスクは上昇しない」と解釈しても良いのではないかと思っている。 病気別で見てみると、心筋梗塞に関しては、少量の飲酒をしている人ほどリスクが低く(男性では0.83杯/日、女性では0.92杯/日の飲酒をしている人で最もリスクが低かった)、ある程度以上になるとリスクが高くなるのが分かる。 一方で、女性の場合、乳がんや結核は、少量からリスクが上昇しているのが分かる。男性のデータもほぼ同じパターンであった(男性の場合は乳がんの代わりに口腔がんのリスク上昇が認められた)。 つまり、1日1杯程度の少量のアルコールの場合、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低いことと、乳がんや結核(そしてアルコールに関連した交通事故や外傷)のリスクが高いことが打ち消しあって、病気のリスクは変わらないという結果になっていると考えられる。