ウソだろ、「井戸の影」だけからこんな大発見を…?古代人が「地球は丸い」と知っていたワケ
地球46億年の歴史、地震のメカニズム、気候変動のからくり、日本列島の特徴、宇宙の成り立ちと進化……誰もが知っておくべき地球科学の教養。そのエッセンスが凝縮されているのが、「高校地学」だ。 【写真】なぜ日本には地震が多いのか…地球科学で見る「列島の異変」と「次の大地震」 本連載では、「最高の教養」である高校地学の中身を、わかりやすくご紹介する。地質学、古生物学、自然地理学、気象学、天文学、宇宙論など、幅広い学問分野の最新成果がまとまったその魅力を、存分にお楽しみいただければと思う。 本記事は、『みんなの高校地学 おもしろくて役に立つ、地球と宇宙の全常識』(鎌田浩毅/蜷川雅晴・著)を一部抜粋・再編集したものです。
古代人が「地球は丸い」と知っていた理由
私たちは地球儀を見たり、宇宙からの写真を見たりして、地球の形が丸いことを知っていますが、地球の形はいつごろどのようにしてわかったのでしょうか。 紀元前330年ごろに、古代ギリシャの哲学者であるアリストテレス(前384~前322)は、月食のときに月に映る地球の影の形が円形であることから、地球が球形であると考えました。月食とは、地球から見て月が太陽と反対側にあるときに、地球の影によって月が欠けて見える現象です。 また、沖から陸に近づいてくる船を海岸から眺めると、船の全体が見えるのではなく、帆の高い部分から見えます。やがて船が近くにくると、船の低いところも見えるようになります。これは地球が球形であるために起こる現象です。このように、身近な現象を観察すると、地球についてわかることがたくさんあるのです。 アレクサンドリア(エジプト)の図書館長だった古代ギリシャ人のエラトステネス(前275~前194)は、紀元前230年ごろ、次のような方法で地球の周囲の長さを測定しました。 エラトステネスは、夏至の日の正午に、エジプトの北側にあるアレクサンドリアと南側にあるシエネ(現在のアスワン)で、太陽の南中高度を測定しました。「南中」とは、天体が真南にくる瞬間のことです。シエネでは井戸の底を太陽光が照らすことから、太陽の南中高度は90度であることがわかり、アレクサンドリアでは地面に垂直に立てた棒の影の長さから、太陽の南中高度は82.8度であることがわかりました。地球を球形と考えると、2地点の南中高度の差(90-82.8=7.2度)は、「緯度の差」と考えられます。