本土最大の米空軍基地は東京に。衆院選東京25区福生市の争点は?
「横田基地問題」を訴える候補は4人中1人だけ
JR福生駅東口で、ある候補者の街頭演説を聞いた。候補者は、JR福生駅東口でマイクを握ると「日本の大きな課題の1つは少子高齢化」と問題を提起し、社会保障をさらに充実させると訴えた。 終了後、拍手を送っていた60代の男性会社員は、社会保障を充実させるという公約について「評価したい」と満足した表情だった。一方、少し離れたところで耳を傾けていた市内在住の男性公務員(53)は、「ここから国会議員として出るなら、横田基地の問題や日米安保をメインに考えるべきではないでしょうか」と不満を示す。 演説中、横田基地の話は一切出ずじまい。配布されたビラを読んでも書かれていなかった。男性公務員は、元知事の石原慎太郎氏がかつて、横田基地で民間航空機も運行する「軍民共用化」の実現や、横田基地上空を中心とした首都圏上空の米軍管制エリアであり、米軍の許可なしに日本の航空機が自由に飛べない「横田空域」の返還を訴えていた点にふれ、「その是非は別にしても、まだ石原さんの方が福生市民に伝わる話をしていました」ともどかしげに語った。
東京25区の大半の候補者は、横田基地を争点にするつもりがなさそうだった。別の候補者とJR福生駅西口で立ち話をした際、横田基地についてたずねたところ「今までこの地域の方々が基地との友好関係を築いてきた経緯があります。基地問題は争点にならないでしょう」と答えた。 ほかの2候補についても選挙戦で配布しているビラを読んだが、横田基地について言及していたのは1候補のみ。オスプレイの横田基地配備計画の撤回を訴えていた。もう1人の候補のビラではまったく触れていなかった。
「もし戦争が起きたら……」
「アメリカンな基地の街」というイメージが強い福生市だが、国道16号を離れると“アメリカ感”が薄れる。JR福生駅付近までくると、他の多くの街と同じように、大手スーパーがあり、コーヒーのチェーン店があり、そして居酒屋がある。 夕方、福生駅東口から数分ほど歩きまわった末、目に入ってきた居酒屋「炭火焼き鳥 纏(まとい)」へ。カウンターに座り、瓶ビールとおでんを注文した。爽快な苦味の冷たいビールと、だしのしみた大根で少し元気を取り戻した。 カウンターの中にいた店長の吉崎覚(よしざきこう)さん(40)にこの日の取材の話をすると、「この店にも、お客様として米軍や航空自衛隊の方が来られますよ」と返ってきた。 独立開業から2年半。基地の関係者は店を支えてくれる大切な顧客だ。一方で「もし戦争が起きたら、司令部のある横田基地が標的になる可能性も考えておかないといけないのかなとも思います」と静かに語った。
(取材・文:具志堅浩二)