家計を圧迫する物価高騰、背景に温暖化
気象災害で食料品も高騰
農業も温暖化の直撃を受けています。2022年には、ミシシッピ川流域の干ばつによって農産物の輸送が滞ったため、家畜用飼料や穀物の価格が高騰したことが農業経営者のコスト増につながり、結果として肉や乳製品の価格が上昇しました。コスト増の多くは、消費者が払うことになります。 また、カリフォルニア州では、洪水によるレタス不足や、ハリケーンがもたらしたオレンジの供給減少など、極端な気象現象が食品価格をさらに押し上げています。 さらに、国連食糧農業機関(FAO)によると、西アフリカと中部アフリカでの干ばつの影響で、カカオの価格が約40%上昇しているそうです。その影響はチョコレートだけでなく、化粧品や健康補助食品などの価格にも及ぶ可能性があるといいます。 温暖化と気象災害の激甚化が進むにつれて、物価上昇がさらに大きな問題になると考えられます。2024年の研究によると、気候変動に起因する極端な暑さによって、過去30年間で121カ国のインフレ率を押し上げたといい、また、別の研究では世界的なインフレ率が2035年まで毎年1%上昇すると予測されています。
低所得世帯への負担
気候変動が引き起こすインフレは特に低所得層に重くのしかかります。国連貿易開発理事会のRodrigo Cárcamo-Díaz氏は、低所得世帯には「消費者物価指数以上の影響がある」と指摘します。 低所得世帯は、気候変動による商品価格の急激な上昇に最も脆弱(ぜいじゃく)で、賃金上昇が物価上昇に追いつかない構造的な問題に直面しているとのこと。「何を買おうかな」が「何が買えるかな」に変わっていくんですよね。 また、気温上昇による電力需要の増加や気象災害によるインフラ損壊は、電力料金のさらなる上昇を招く恐れがあるといいます。電力供給が不安定になることで、低所得世帯への影響が深刻化することが懸念されます。 Semenova氏は、今後予想される気候変動の影響について、次のように見通しを述べています。 「気候変動による生活費の上昇やインフレの影響は今後も続き、アメリカの家計に重くのしかかるでしょう。かつてのように物価が安定していた時代は終わりを迎えました。気候変動によるコスト上昇が新しい日常になります。」 Source: Grist Reference: Bankrate, Grist (1, 2, 3), Statista, State of Texas, U.S. Bureau of Labor Statistics, CBS, CNBC, Kotz et al. 2024 / Nature Communications Earth & Environment, Scientific American, Mosquera-López et al. 2024 / Energy Economics
Kenji P. Miyajima