航空業界・農業にも参入!知られざる静岡の200年企業
物流の2024年問題~「危機はビジネスチャンス」
今大きな問題となっている物流の「2024年問題」。実質、上限のなかったトラックドライバーの時間外労働が、2024年4月から年間960時間に制限された。ドライバーにとっては残業代が減り、離職がこれまで以上に増えると予想されている。 「我々かなり早くからこれはいずれ大きな問題になるんじゃないかと取り組んでまいりました。むしろ我々にとっては、ビジネスチャンスが来たと」(鈴木) こう言えるのは、長年独自の物流改革に取り組んできたからだ。
滋賀・甲賀市にある「TOTO」の第2工場にやってきた車は鈴与特注のトレーラー。一般的な大型トラックの2倍近くの荷物を積むことができる。 鈴与は以前から積極的にトレーラーを導入してきた。現在では保有するトラックの7割にあたる約3800台がトレーラーだという。 積み込みを終えて千葉県の倉庫に向けて出発。滋賀県から千葉県の倉庫までは約470キロで、7時間の道のりだ。出発から3時間で静岡に入る。すると高速を降りて向かったのは藤枝市にある鈴与の駐車場だ。荷台と運転席部分を切り離すと、運転席部分は帰ってしまった。 翌朝4時に別の車がやってきて荷台とドッキング。ドライバーも別の人だ。「違う乗務員が滋賀から積んできた荷物を、僕が今日千葉に配達します」と言う。 これは、ドライバーの働く時間を減らすため、トレーラーの頭だけを入れ替えて荷物を運ぶ「中継輸送」という方法だ。 「休む時間が増えたので、とてもいい取り組みだと思います」(ドライバー・松島義明)
「中継輸送」は陸上だけではない。「RORO船」と呼ばれるトレーラー専用のフェリーがある。トレーラーが次々と入っていくと、頭の部分だけが出てきた。船内に残るのは荷台部分だけ。到着した港で、別のドライバーが荷台を引き継ぐ段取りだ。 だが、鈴与のドライバーは残業が減って、給料も減ったのでは? 「(4月から)僕たちの給料は上がっています。この2024年問題を見越しての昇給だと思います。だからこの会社は若い子が多いですよ」(ドライバー・佐々木勇登) こうした取り組みもあって、鈴与のドライバーの離職率は全国平均の半分以下に。さらに、一連の改革が荷主から評価され、仕事の依頼が増えているという。 ※価格は放送時の金額です。 ~村上龍の編集後記~ フジドリームエアラインズという名称、富士山静岡空港に間に合わせるために物流大手の鈴与が立ち上がったという風に描かれる。実際は少し違う。鈴木与平氏の夢のために、できたエアラインなのだ。与平氏は、学生時代はグライダーに乗り、大空への夢を育んできた。だから、日本で唯一のリージョナル航空会社を作った。航空会社は「物流の華」だ。だがリアルな部分は、創業時からフライトシミュレーターを持つことに象徴される。初代、船で江戸などに米を運んだ廻船問屋としての伝統は、しっかりと守られている。 <出演者略歴> 鈴木与平(すずき・よへい)1941年、静岡県生まれ。東京大学卒業後、日本郵船を経て、鈴与株式会社入社。1977年、社長就任。2001年、八代目鈴木与平を襲名。 ※「カンブリア宮殿」より