共通言語は手話。スターバックスが“多様性”を体現する店舗をつくった理由
「サイニングストア」のオープンを機に、パートナーへの応募が増加
――半数以上が聴覚に障害のある人という職場環境は、日本でまだまだ珍しいと思うのですが、何か大変だったことや、難しさを感じたことはありますか。 吉田:聴覚に障害のあるパートナーの割合が増えることで大変さや困難さを感じたことはありません。 強いて言うなら、私はこの店舗に着任するまで手話経験がゼロだったので、一から覚えるのが大変といえば大変だったかもしれませんね。でも、周りのパートナーたちが教えてくれるので、毎日少しずつ、楽しみながら覚えました。 ――パートナーの皆さんの反応はいかがでしょうか。 吉田:入社前に「新しい環境で頑張れるかな」とドキドキするのはもちろんですが、それ以上に、お客さまとコミュニケーションを取れることに対するワクワク感や、これまでお客さんとして飲んできたドリンクを自分が作れる喜びに溢れていて、みんなキラキラしています。 ――吉田さん自身がこの店舗に配属されたことで気付いたこと、感じたことはありますか。 吉田:コミュニケーションを取る上で言語や年齢、手話ができる、できないなど関係なくて、ただお互いの「伝えたい」「理解したい」という気持ちが大切なんだ、ということに改めて気付かされました。 また、「アイコンタクト」といった言葉以外のコミュニケーションの大切さも感じています。別の店舗で働いていた頃は、ついつい下を向いて作業をしながら、声だけで伝えてしまうことも多かったのですが、やっぱり相手の目をしっかり見て伝えると、伝わり方が違うんですよね。これは、他店舗からヘルプで来てくれるパートナーからもよく聞こえてくる声です。 ――お客さまからの反響はいかがですか。 吉田:メディアで取り上げていただいたこともあって、遠方から来てくださるお客さまもたくさんいらっしゃいます。 一方で、近所にお住まいで、「このお店が好き」と1日に2回も通ってくださる方もいます。私と同じように、nonowa国立店ができるまで手話に触れたことがなかったけれど、パートナーと会話ができるようになりたいと手話を学び、今では完全に手話でコミュニケーションを取れるようになったという方もいらっしゃいます。 向後:このお店ができたことを知って、スターバックスで働きたいと応募してくれる人が増えたことも大きな変化です。近隣にお住まいの方や、同じような個性を持つ方が集まるのではと思っていたのですが、障害の有無にかかわらず、遠方にお住まいの方からも「ここで働きたい」という方が増えたのはうれしい驚きでした。