グランプリ受賞! 富士フイルムのオウンドメディア「ChekiPress」が考えるブランディングの本質とは?
運営メンバー全員が「ブランド・マネージャー育成講座」を受講
大久保: 「Cheki Press」で発信するうえで、気をつけていることはありますか? 門田: 記事中での表現や言葉選びには特に気を配っています。言葉一つとっても受け止め方は人それぞれ。たとえばチェキを表現する際には「レトロ」という言葉は使わないようにしています。年齢が上の世代にとってチェキは数十年前に使ったことのある「レトロ」な存在かもしれませんが、今の若い世代にとっては新しい体験ができる見たこともないツールかもしれない。「レトロ」という言葉を選ぶことがチェキの持つ可能性を狭めてしまうことにつながってはならない、そんな意図があって表現や言葉選びに気をつけています。 あと、「Cheki Press」では、「印刷」という言葉も使いません。チェキは露光させたフイルムを現像液で処理し、画像を可視化して定着させており、その過程は「印刷」ではなく「現像」なんです。そこは富士フイルムがこだわっている表現でもあります。 大久保: 自社で取り決めている一貫したメッセージやルールをオウンドメディアでも踏襲することは当たり前のように聞こえますが、「Cheki Press」のように公式サイトとは別でコンテンツマーケティングのためのオウンドメディアとして情報発信をするときにその一貫性を忘れてしまうことも多いため、気をつけたいですね。集客のために実施している施策はありますか? 門田: 「Cheki Press」では特に広告配信などはしておらず、情報拡散のために行っていることといえばSNSの公式アカウントで記事をシェアすることくらいですが、それでも自然発生的に拡散されているようで嬉しい限りです。また、伝わり方の「広さ」はもちろん大事ですが、「深さ」も意識しています。時には特定の業界の方から「あの記事はよかった」「書いてくれて嬉しかった」という声をもらうこともあって、一人でも「すごくよかった」と言ってくれると、「ああ、伝わったな」と感じられて、嬉しいですね。 大久保: 先ほど「Cheki Press」KPI・KGIについての考え方はお伺いしましたが、オウンドメディアを運営していると、「どのぐらい売上に貢献しているのか」といった声が社内から上がることもあります。そこにはどう対応していますか? 門田: 我々のオウンドメディアのうち「instax.jp」がそのミッションを担っていて、広告配信も含めてさまざまな施策を実施のうえ、効果測定しています。それに対して、「Cheki Press」はわりと自由に運営させてもらっていて、そのコンセプトは運営当初から変わっていません。それでいてアクセス数が大きく落ち込むようなこともなく、うまく役割分担できているのかなと思います。 大久保: 目に見えた事業貢献を求められることも当然ありますが、その前の指標としてアクセス数を確認している事例も多いですし、そのアクセス数が落ち込むことがなく長く運営を続けていることで、好調なチェキの事業に貢献しているかもしれませんね。コンセプトを変えずに運営を継続するためには、経営陣からの理解も必要です。何か心がけてきたことはありますか? 門田: 運営を継続する過程で、ブランディングを強く意識し始めました。1998年に初代チェキが発売してから約20年経った頃からです。「チェキの名前は知っているが使ったことがない」人に向けて、改めてブランディングを実施しようと考え、「Cheki Press」をリブランディングの場所とすることを経営陣に説明し、理解を得ました。 ブランドというのは、自分たちで作るものではなく、ユーザーの心の中に形作られるイメージでなければならない。その想いをサイト構築に反映させた成果が「コンテンツマーケティング・グランプリ2023」で評価され、ブランドコンテンツ部門でグランプリを受賞できたことはすごくうれしかったです。ブランドを体現するサイトとして第三者から裏付けを得られたことは社内でも喜ばれて、社長賞をいただきました。 大久保: おめでとうございます! 門田: ブランディングとは、ユーザーに商品の価値を伝える一連のプロセスです。それを理解してもらうために、「Cheki Press」に関わるメンバーは全員ブランド・マネージャー認定協会によるセミナーを受講して、資格を取得しています。全員がブランディングの大切さを理解したうえでメディアを運営しているのです。 大久保: 講座を受講したことで、どのような効果がありましたか? 門田: ブランドを作る難しさや、ブランディングには強い信念が必要であることがわかりました。富士フイルムのインスタント事業部統括マネージャーは、自らブランド・マネージャーとして「チェキのあるべき姿」の指針を作って展開していますし、オンラインとリアルのブランドイメージを連動させて、統一したメッセージを伝えています。 大久保: 門田さんにとって、サイト運営のやりがいは何ですか? 門田: インスタント事業が好調なことがまずいちばんのやりがいです。あとは、チェキを担当するようになってからは、若い方が集まるフェスに出展したり、展示会やイベントに参加したりして、ユーザーが喜ぶ姿を間近で見られるようになり、それが原動力になっています。そこで体感できる手触り感があるからこそ、続けられているのだと思います。 大久保: 今後「Cheki Press」をどのようなオウンドメディアにしていきたいですか? 門田: 私が担当に就任したときと比べると製品の種類が格段に増えており、チェキの楽しみ方も広がっています。「Cheki Press」ではそれをチェキユーザーにわかりやすく伝えると同時に、チェキに興味を持っているけれどまだ使ったことがない方々に、チェキの楽しさを知ってもらいたい。そのための発信を続けていきたいです。 聞き手:大久保 亮太(おおくぼ・りょうた) 株式会社はてな コンテンツ本部 執行役員 コンテンツ本部長 大学卒業後、広告代理店を経て、2011年にはてなへ入社。 事業開発部と営業部を兼務し、はてなの広告全般とアドテクノロジーを活用した事業開拓を行う。現在は、執行役員として、オウンドメディアCMS「はてなブログMedia」や「はてなブログBusiness」など、法人向けの「はてなブログ」各種サービスや、企業のオウンドメディアのトータル支援など、コンテンツマーケティングの支援サービスを統括している。 ・はてなブログMedia ・コンテンツマーケティングサービス ・はてなビジネスブログ