グランプリ受賞! 富士フイルムのオウンドメディア「ChekiPress」が考えるブランディングの本質とは?
門田: 我々の中ではいくつかの指標を定めていますが、数値目標のような形にはしていません。SNSでの反響やPVは編成会議のときの参考にしています。
ターゲットに刺さるコンテンツをつくるための心がけ
大久保: チェキを知らない幅広い層をターゲットにされていると伺いました。ターゲットに刺さるコンテンツを企画するために心がけていることはありますか? 門田: チェキはコミュニケーションのためのツール。どう使うか、どんな写真が撮れるのか、どんな楽しいことができるのか、実際のチェキプリントや利用シーンは記事の中に必ず入れています。
「instax mini Evo™」という機種には「光漏れ」というレンズエフェクトがあります。いま、若い方たちの間で、スマートフォンのカメラとは違う風合いで撮影できるという理由でフィルムカメラがブームになっています。彼らはフィルムカメラならではの写真表現を「エモい」と感じていて、その中にはカメラに光が入りフィルムの一部が感光してそこにない色が焼き付く現象なども含まれています。「光漏れ」はここに着想を得て開発したレンズエフェクトです。
最近では、チェキで撮るときの撮影ポーズがSNSにたくさん投稿されていて閲覧数も多いです。今の若い方は、写真を撮り慣れているし、撮られ慣れているので、楽しい写真を撮影するためのアイデアも豊富です。若い方たちが編み出した写真を撮るのが楽しくなるアイデアを紹介するということは、これからも積極的にやっていきたいですね。 大久保: 「Cheki Press」を拝見していても、記事に登場する方によって、チェキの写真が全然違うのはおもしろいですね。 門田: チェキの特にアナログモデルはズームができないですし、一部の機種を除きフラッシュも強制自動発光するなど、自分でコントロールできることに制約があるのですが、その制約の中で自分の撮りたいものをいかに表現するか、ということに魅力を感じて使っていただいている方も多いです。 デジタルカメラが普及する過程で画像の高画素化が急速に進むにつれ、私自身「いい写真=きれいな写真=高画質な写真」と考えていましたが、チェキを担当するようになってその考えが改められました。 チェキだと、デジタルのような解像度の高い写真は撮れないし、失敗もする。でも、仕上がった写真からは「みんなで集まったこの時が一番楽しかったな」とか「この風景がきれいに見えたからシャッターを切ったんだな」ということは伝わってきます。 ブレていても、暗くても、白飛びしていても、撮った瞬間の空気感やその時感じた想いが込められていれば、それは「いい写真」なんだと思うようになりました。 また、若い方たちがアナログのツールに魅力を感じている理由の一つに、自身が成長してゆく過程を楽しめることがあると考えています。初めて触れるアナログツールは最初のうち、思いどおりに操れず失敗ばかりだけど、失敗を重ねるうちにコツを掴み使いこなせるようになる。今の若い方たちはそうした体験価値が味わえるツールに魅力を感じています。チェキも、写真撮影の上達プロセスを体験でき、しかも他人とのコミュニケーションも楽しめる新しいツールとして認識していただいているのではないかなと思っています。