各地で事故多発の掘削機「シールドマシン」の稼働実態とは? 広島市の住宅街陥没に続き、町田市でも地下水湧出&気泡出現!?
また、シールドマシンによる事故は人災の側面も強いと筆者は見る。 まず、事前調査がおろそかである。徳竹所長は、「マシンは掘進すれば前に行くしかない。後戻りできない。掘削前にできれば200m置きにボーリングをして地質を把握する必要がある」と強調するが、多くの事業ではそれほど綿密には実施されていない。 例えば、リニアは工区によっては約400m置きに過ぎないし、外環工事では、調布市の陥没地点の前後1㎞にわたり未実施だった。ネクスコ東日本が慌ててボーリングを実施したのは陥没事故が起きてからだ。 そして、長さ最大30m台の空洞が3つも見つかり、住民を不安に陥れた。 さらに、工事の阻害要因が発見・予期されても、結局は学識者の判断で工事を開始・再開してしまう傾向もある。 広島高速5号線の地盤は、徳竹所長が「マシンを使用すべきではない」と判断する硬い花崗(かこう)岩だ。しかし、広島高速道路公社は学識経験者らからなる「広島高速5号線トンネル安全検討委員会」から「どんな工法でも安全な工事は可能」とのお墨付きを得て工事を開始した。 調布市での陥没事故では、原因究明を担う「有識者委員会」は21年2月、非常に乏しい根拠で「極めて特殊な地盤における施工ミスで起きた」と公表し、工事再開のお墨付きを与えた。 その後にシールドマシンの運用を予定していたJR東海は、同年6月からの住民説明会でこの見解を引用し、「リニア工区に『特殊な地盤はない』し、施工管理も強化するので追加の事前調査は実施しません」と明言。ところが、今年になって目黒川に気泡が湧き、町田市では民家に地下水と気泡が出た。 ■JR東海が強調する「安全」とは? 11月8日。JR東海は町田市のMさん宅を訪ね、採取した水の分析結果を「起泡剤には界面活性剤が使用されるが、今回の湧水では活性剤由来の成分濃度は基準値以下だから問題ない」と説明。Mさんは「そんな説明で納得できますか。私が心配なのは、地面の下がどうなっているかなんです」と不安げに語る。 実際、Mさん宅周辺は11月現在も大変な状況だ。近所の住民Aさんが言うには、今年に入ってからアスファルトのあちこちに亀裂が走るようになり、町田市に連絡をして充填剤で補修させても、すぐに新たな亀裂ができるというのだ。 筆者も数十の亀裂を確認した。工事との因果関係はわからないにしても、Aさんは「地盤が緩んだのでは。地盤沈下するかも」と心配する。