各地で事故多発の掘削機「シールドマシン」の稼働実態とは? 広島市の住宅街陥没に続き、町田市でも地下水湧出&気泡出現!?
その地下18mでは、直径10mのシールドマシンを用いて「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(以下、鉄道機構)による相鉄・東急直通線・新横浜トンネル工事が行なわれていた。原因はマシンが土砂を取り込みすぎたことだった。 鉄道機構は、北海道新幹線の延伸工事も直径12mのマシンで行なっている。21年7月、羊蹄(ようてい)トンネル工事でマシンが巨岩とぶつかり工事中断となり、22年4月13日、その巨岩の直上の地表面が陥没。神奈川と北海道どちらの事故でも、人や車が巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだった。 また、広島県広島市ではシールドマシンを用いた工事によって、立て続けに市民生活が脅かされている。 これは本誌23年36号でも取り上げた事例だが、広島市の広島高速道路公社は直径14mのマシンで広島高速5号線を建設中だ。 このうちの「二葉山トンネル」(約1.4㎞)では、18年からその直上の住宅街で振動や騒音が確認され、外壁や路面に亀裂が走っていた。そして、22年末には地表面が隆起し、工事が半年間も中断した。家によっては水道管が破損し、障子も閉まらなくなった。 ■相次ぐ事故は「人災」か なぜ大口径のシールドマシンによる事故が頻発するのか。 地盤の研究を進める「環境地盤研究所」の徳竹真人(まひと)所長は以下の見解を示した。 「土質力学の専門家などは『トンネル直径の1.5倍以上の土被(どかぶ)り(トンネル上部から地表面までの距離)があれば地上に影響はない』と学会などで述べていました。ただこれは、工事の実績でわかった経験値に過ぎません。 そして、当時のシールドマシンの直径はせいぜい8m。この頃は市民生活を脅かすような事故はありませんでした。 しかし、近年はトンネルとそれを掘削するシールドマシンの直径が徐々に巨大化しています。ここで問題になるのが、『トンネル直径の1.5倍以上の土被りがあれば地上に影響はない』という小口径の経験値を、大口径のトンネルにもそのまま適用できるのかどうか。実は、誰もそんな計算なんてしていないんです」 確かに、20年10月18日の東京都調布市での陥没事故では、トンネルの直径16mに対して土被りは3倍弱の47m。今回の町田市での気泡事件は、トンネルの直径14mに対して土被りは3倍強の45mだ。土被り1.5倍を優に超えているが、事故は起きた。