何千年もの時を経て古代ローマのモザイク画を発見。6色の小石は「おしゃれリーダー」のこだわり?
イングランドのバーミンガムから西に80キロほどのところにあるウロクセター・ローマン・シティで、古代ローマ時代のモザイク画が見つかった。ウロクセター・ローマン・シティはローマ帝国時代にブリテン島で最大の都市が築かれた場所で、当時はポンペイとほぼ同じ規模を誇ったほどに発展した。現在は遺跡公園として保護され、発掘調査が行われている。 今回の調査は、この遺跡を運営するイングリッシュ・ヘリテージと、遺跡を保護・発掘調査する団体ヴィアノヴァ・アルケオロジー&ヘリテージサービスとアルビオン・アルケオロジー、バーミンガム大学がタッグを組んだ。2024年の7月から8月にかけて、約30人からなるチームで調査を行ったところ、2000年前の見事なモザイクの床を発掘した。 ヴィアノヴァ・ヘリテージサービスのプレスリリースによれば、モザイク画はウロクセターで1859年以来、165年ぶりに発見されたという。モザイクは、白、赤、青、黄色などの鮮やかな色彩の小石が使われており、魚とイルカらしきものが描かれている。 一方でバーミンガム大学の考古学者ロジャー・ホワイトはモザイクの素材の希少性を指摘した。6色揃えるには地元以外から輸入しなければならず、このようなケースはウロクセターでは初めてだという。そのことを踏まえてホワイトは、「モザイクは当時の嗜好に非常にマッチしています。おそらく文化やファッションに精通しており、邸宅に何を施すべきかを熟知している人物の邸宅だったのでしょう」と推測する。 モザイクが見つかった場所について、イングリッシュ・ヘリテージのシニア・プロパティ・キュレーター、ウィン・スカットはCNNの取材に対し、「『裕福な客をもてなす』ことに慣れていた富裕層の人物か役人のダイニングルームであった可能性が高い」と話した。そして、「このモザイク画は家主の自己満足ではなく、他人に見てもらうためのものだったと思います」と付け加えた。 モザイク画がなぜこのように美しい状態で見つかったのかについては、おそらく3世紀か4世紀ごろに建物が改修された際に、床を高くするために部屋を埋めたので残されたのだという。イングリッシュ・ヘリテージのウィン・スカットは、「私たちの発掘調査は、この建物の壁を発見することを目的としていましたが、何千年もの間、隠されたままになっていた美しく無傷のモザイクを発見できるとは思ってもいませんでした」と発見の喜びを語った。 発掘調査では、小さな四角い祠堂や霊廟のほか、ウロクセターのメインストリートの一角で7メートル×50メートルの巨大な記念碑的建物も見つかった。年代の解明はこれからだが、考古学者たちがこれまで発掘してきた200軒以上の家屋や市民浴場、フォーラム、郡庁舎、司法センターと並んでウロクセターという都市の歴史を紐解く鍵となるだろう。田園都市であり、近代的な開発から逃れたウロクセターは、それゆえに「この国のどこにもないような素晴らしい保存状態が保たれている、特別な遺跡なのです」とスカットは語る。
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