花王、博報堂「最先端の人の研究」とは?生成AIとは違う“新しいアプローチ”の面白さ
花王の力を借りた…NTTドコモ、ミルボンの「ビジネス展開」
また、仮想人体生成モデルの機能を提供できるプラットフォームを用意することで、他の企業がAPIを介して仮想人体生成モデルの機能を自社のアプリやサービスに取り入れることができるような展開をしている。たとえば、ヘルスケア事業を展開するNTTドコモの「健康サービス」や、ヘアサロンメーカーのミルボン(MILBON)の「サロン用接客アプリ」など、幅広い企業などに検討・活用されている。 花王の仮想人体生成モデル活用企業の例 (出典:筆者作成) これら企業は、合成データのアプローチを組み合わせ、自社のデータやナレッジを新たな価値提供につげている好例だ。 ここからは、もう1つの事例である博報堂の合成データ活用の取り組みを解説する。
博報堂の「合成データ活用」でマーケティングが激変する理由
博報堂は、保有する独自の大規模生活者調査データやデスクリサーチをベースにした基本プロフィール、価値観/意識、生活行動、消費行動、メディア消費、ブランド評価などを生成AIに読み込ませ、本当に存在する人のように、それぞれが異なる性格や価値観を備えた「多様なバーチャル生活者」を生成した。 この仮想的に作られた「バーチャル生活者」には、年齢・性別・趣味嗜好など、細かな属性が設定されているほか、それに合った性格が細かく設定されている。 これをどう利用するかという点だが、たとえば、多様に存在するバーチャル生活者の中から、特定の1人を選びだし、チャット形式で、選んだバーチャル生活者に対して質問を投げかけることができる。本物の人間であれば直接聞きにくい(または回答してくれない)質問に回答させることができるため、「生活者の持つ本音を知るためのツール」として活用が検討されている。 これは、企業のマーケティングや商品開発などに生かすことができる。さらに、過去の調査結果をベースにクラスター分析などを行い、市場を代表する複数のバーチャル生活者を作りだし、本音を聞き出し、商品開発などに生かすなどの活用が考えられる。 このように、バーチャル生活者との対話を繰り返し、商品・ブランドに関する感想や人間関係に関する悩みなどに耳を傾けることで、マーケティング・商品開発をはじめ、組織づくり、アイディエーション、ワークショップといった多岐にわたる領域での活用を想定されている。 そのほか、本アプローチでは、「未来のバーチャル生活者」や「世界のバーチャル生活者」など、普段、アクセスしづらい(できない)ターゲットを生成して、対話することが可能になるため、未来洞察や世界のインサイトリサーチなどにも応用できる。