花王、博報堂「最先端の人の研究」とは?生成AIとは違う“新しいアプローチ”の面白さ
近年、生成AIを活用する企業事例が数多く登場しているが、その中でも1歩先を進んでいるのが、大手日用品メーカーの花王と広告代理店の博報堂だ。両社に共通するのは「合成データ」と呼ばれるデータを活用して新しいビジネスを生み出している点にある。そもそも合成データとは何か、花王、博報堂は合成データで、どのようなビジネスを考えているのか。本記事では、国内では数少ない「合成データ」の事例を詳しく解説する。 【詳細な図や写真】
「合成データ」とは?
近年、生成AI活用の広がりとともに注目されはじめているのが「合成データ(Synthetic Data)」だ。合成データとは、実際に存在するデータにそっくり似せて“人工的に作り出されたデータ”のことだ。 この合成データは「生成AI」のアプローチに非常に似ており、この応用例と考えることもできる。生成AIは、学習したデータを基に“実在しないデータ”を新たに生み出すアプローチであり、この点は合成データも同じだ。少し異なるのが、合成データの場合は、“本当に存在するデータの構造や特徴を模範して、本物そっくりに似せたデータを意図的に生成しようとするアプローチと言える。 実在するデータにそっくりな特徴を持つ合成データは、どのような場面で役立つのだろうか。たとえば、下記のような悩みを解決してくれる。 合成データが役立つシーンとは? ・悩み(1):「生成AIに社内データを学習させたいが、集めることができるデータの数が足りない」 → 社内データそっくりの「合成データ」を作り、学習素材として利用すれば解決 ・悩み(2):「個人情報を生成AIに学習させたいが、こうした取り扱い注意のデータはそのまま学習データとして使うことができずに困っている」 → 個人情報そっくりな、個人情報”風”の「合成データ」を作り、学習素材として利用すれば解決 すでに、この合成データを活用して成果を上げている企業が出始めている。ここからは、合成データを活用した事業・サービス創出の先端事例である花王と博報堂の事例を解説する。