花王、博報堂「最先端の人の研究」とは?生成AIとは違う“新しいアプローチ”の面白さ
花王の開発した「仮想人体生成モデル」の面白さ
花王は洗剤・シャンプーなどの消費財や、化粧品、ヘルスケアなど、人の身体や健康・生活に関わる製品を展開する企業だ。 同社は、これまで取り組んできた「身体の研究」で得た知見や、研究を通じて蓄積してきた「測定技術」などと、人の状態に関する測定データを組み合わせて「仮想人体生成モデル」と呼ばれる人体の統計モデルを開発した。 これは、免疫指標や血液検査の値、認知機能、皮膚の状態、体臭、ストレスや疲労傾向、性格傾向、睡眠状態など、人体に関する測定データを膨大に学習させて作られた、言わば「人の体のことならなんでも知っている統計データベース」のようなものだ。 そんな仮想人体生成モデルに、たとえば、健康診断などで調べた自身の健康指標の値をインプットすると、その他の項目に関する統計的な「推定値」を教えてくれる。仮に「性別:男性」「年齢:40歳」など、簡単な情報を入力するだけでも、「40歳・男性の血液や内臓脂肪面積の平均値は〇〇」といったように、あらゆる項目の推定値を知ることができる。 通常、こうした数値情報を知るためには、医療機関などに足を運び、コストや時間をかけて測定する必要がある。仮に、内臓脂肪面積を測定しようとすれば、本来はコンピューター断層撮影装置(CT)などの検査を受ける必要があるが、仮想人体生成モデルを使えば、自身の基礎的な健康データを入力するだけで統計的な推定値を知ることができる。 こうした気軽さに加え、仮想人体生成モデルを利用する人は、自身の名前や住所など、個人が特定される情報を入力することなく、秘匿性が担保されたまま健康状態の統計値を知ることができるようになる。 なお、仮想人体生成モデルで提示することができる項目は、一般的に健康診断などで得られる身体に関する項目や、ライフスタイル(食事、運動、睡眠など)や性格傾向、嗜好性、ストレス状態、月経などの日常生活で関心の高い項目まで1800項目以上だ。 それでは、花王はどのように仮想人体生成モデルを開発したのか。同社はPreferred Networksと連携し、(1)自社で行った1800項目以上にもおよぶ1000名分の人の測定データと、(2)データプロバイダーから入手した100万人分の健康診断結果などの匿名加工情報を組み合わせるとともに、欠損データを効果的に補完するアルゴリズムをPFNが開発したことで仮想人体生成モデルを構築した。