富士山噴火で「泥流」が発生したら…まさかの水深20センチで「水死」、そのとき避難猶予は「たったの1時間」
前半において、泥流の恐ろしさについてご説明しました。続いては、富士山が噴火した場合に想定される、2つの泥流のタイプについてみてみましょう。 【画像】「火砕流」と「火砕サージ」…もし襲われたら「即死」の恐怖
タイプ1:融雪型泥流
富士山の山頂付近は秋から春にかけて、雪ですっぽりと覆われている。この時期に山頂から噴火活動が始まると、雪を融かして大量の水が出現する可能性がある。 たとえば、火砕流が噴出した場合には摂氏500度を超える高温により斜面に積もっていた雪や氷が急速に融かされ、斜面を構成する土壌や火山灰と一緒になって泥流を発生させる。 このような融雪型泥流は、たとえ噴火活動がごく小規模でも大量の土砂を流し出して甚大な被害をもたらすので、冬期の噴火には格段の警戒が必要となる。 これまで富士山の斜面で融雪型泥流を起こした記録はないが、氷河や万年雪を山頂にもつ他の活火山では、しばしば深刻な泥流災害を起こしてきた。前述のネバド・デル・ルイス火山で起きた泥流はその代表例である。
融雪型泥流を予測する
富士山では融雪型泥流の発生を定量的に予測するために、積雪量と噴火活動によって与えられた熱量などをもとに、コンピュータ上でのシミュレーションが行われている。そこでは、シミュレーションに必要な自然条件を以下のように想定している。 富士山の表面では強風のため、雪が尾根に積もることはほとんどない。一方で、谷部では最大10メートルほどの積雪がある。一般に、風の影響が少ない森林地帯の平均積雪は30~60センチメートルなので、シミュレーションでは富士山の斜面全体の積雪を平均50センチメートルとしている。 また、火砕流の温度は摂氏500度以上と考え、厚さ50センチメートルの積雪は、火砕流の到達地域ではすべて融けて水になるとした。 次に、融雪型泥流が発生する地点は、火砕流の流下によって中腹に厚く積もった雪が融け始める地点とした。すなわち、この地点まで火砕流は高温を保ったまま流下し、ここから下で雪を融かした泥流が発生すると想定した。