【7分で理解できる米大統領選】ヒラリーが負け、トランプが負け、そしてバイデンも敗れた
トランプの敗北
時計の針を前回の大統領選(2020年)にまで進めよう。 現職のトランプがコロナ感染症対策でもたつく中、2020年の民主党予備選では、ジョー・バイデン前副大統領の他に、左派のサンダース上院議員やエリザベス・ウォーレン上院議員らが出馬した。いずれも高齢の候補者である。党を刷新し、なおかつ、トランプを打倒する──民主党にとってこの両立は困難であった。4月にはサンダースが撤退し、バイデンの指名獲得が確実になった。民主党はトランプ打倒のために、早々に団結を選択したのである。 副大統領候補には、ハリス上院議員(カリフォルニア州)が選ばれた。副大統領候補として、女性では3人目、黒人女性としては初めての登用であった。インド系の母を持ち、初のアジア系副大統領候補でもあった。彼女はカリフォルニア州司法長官から上院議員に転じて3年にすぎなかったが、女性、非白人、そして55歳(ベビーブーマー世代)と、高齢の白人男性バイデンの補完が期待された。ただし、彼女の政治姿勢は慎重で、時としてマイノリティを失望させる。 11月3日の大統領選挙も激戦となった。コロナ禍で郵便投票も増えた。これは自動車を持たない貧しい層には便利であったため、民主党は支持し、共和党は不正の温床と警戒した。結局、トランプは2016年の前回選挙を1100万票も上回る7400万票以上を獲得した。共和党の大統領候補としても、再選をめざす大統領としても、これは史上最多の得票数であった。だが、バイデンが獲得した一般得票数は8100万票以上と、トランプ票を凌駕し、選挙人獲得数ではバイデン306人、トランプ232人となった。 しかも、民主党は上院では3議席増やして50議席となり、下院では10議席減らしたものの多数を維持した。つまり、トリプル・ブルーの出現である。1932年のハーバート・フーヴァー以来、トランプは初めてホワイトハウスと上下両院のすべてを失う大統領になったのである。