iDeCo改正で70歳まで加入年齢が引き上げ? 変更に伴うメリットと注意点
老後の資金を準備するために有効な制度である「iDeCo(イデコ)」。2022年以降数度にわたる制度改正があり、現在もさらなる改正の検討がされています。 この記事では、iDeCoの制度とは何か、これまでの改正内容、現在検討されている内容などについて、初心者にもわかりやすく解説します。
1.iDeCoとは
iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金といった公的年金に上乗せして老後の資金を準備できる私的年金制度です。iDeCoは自分が決めた掛金を拠出し、自分で選んだ運用方法で掛金を運用します。 掛金は65歳になるまで拠出することが可能で、掛金とその運用益の合計額を原則60歳以降に老齢給付金として受け取ります。 【iDeCoのメリット】 ①掛金が全額所得控除になる ②運用益が非課税になる ③受け取り時の税制優遇措置がある 「人生100年時代」に向けて平均寿命が年々高くなっていくなかで、公的年金制度以外にも長い老後生活を送るための資金の備えが必要となってきています。 iDeCoは、税制優遇を活用しながら老後資金を形成できる有効な手段といえます。 (1)iDeCoの加入対象者 iDeCoの加入対象者、加入対象外者について分類をすると、以下のようになります。 【第1号被保険者】 20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生など ※加入対象外となる人 農業者年金の被保険者、国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている人 【第2号被保険者】 65歳未満の被保険者(会社員や公務員などの厚生年金の被保険者)、契約社員、派遣社員、アルバイト、パートの人で厚生年金に加入している人 ※加入対象外となる人 勤めている企業の企業型確定拠出年金に加入している人(規約で個人型同時加入が認められている場合は加入可能) 【第3号被保険者】 20歳以上60歳未満で第2号被保険者(厚生年金保険加入者)に扶養されている人(専業主婦など) 【任意被保険者】 国民年金に任意で加入した人 ・60歳以上65歳未満で、国民年金保険料の納付済期間が480月に達していない人 ・20歳以上65歳未満の海外居住者で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない人 参照:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCo(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html) 2022年5月の制度改正によって、下記の人がiDeCoに加入できるように年齢や要件が拡大されました。 ●会社員や公務員などの国民年金第2号被保険者で60歳以上65歳未満の人 ●国民年金に任意加入している60歳~65歳未満の人 ●国民年金に任意加入している、海外に居住している人 ただし、以下の年金を受給している、あるいは受給したことがある人は、iDeCoの加入要件を満たした場合であっても加入できないため注意が必要です。 ●iDeCoの老齢給付金を受給(一括受取を含む)している、あるいはしたことがある(※企業型確定拠出年金の老齢給付金を受給している、 あるいはしたことがある方はiDeCoに加入できます) ●老齢基礎年金の受給権がある ●特別支給の老齢厚生年金を65歳前から繰り上げ受給をしている (2)iDeCoの掛金上限額 iDeCoの掛金は、加入対象者の資格によって掛金の上限額(拠出限度額)が定められています。iDeCoの加入資格と拠出限度額について分類し、わかりやすくまとめました。 ■自営業者等(第1号被保険者・任意加入被保険者) 68,800円/月 ■会社員・公務員等(第2号被保険者) ①会社に企業年金がない会社員 23,000円/月 ②企業型DC(企業型確定拠出年金)のみに加入している会社員 ③DB※1と企業型DCに加入している会社員 ④DBのみに加入している会社員 ⑤公務員 ②~⑤は20,000円/月を上限 月額5.5万円 -(各月の企業型DCの事業主掛金額 + DB等の他制度掛金相当額) ※2024年12月より ■専業主婦(夫)(第3号被保険者) 23,000円/月 注)※1 DBとは確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済のこと 参照:iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等|iDeCo(https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html) これまでの制度では、確定給付型企業年金(DB)などを併用する会社員や公務員の拠出限度額は12,000円/月が上限でしたが、2024年12月より20,000円/月まで引き上げられ、企業年金(企業型DC、DBなどの他制度)に加入する人の拠出額について公平を図りました。 (3)iDeCoの受給開始時期 iDeCoの受給開始時期はこれまで「60歳から70歳になるまで」の間で選ぶことになっていましたが、2022年4月に公的年金が「繰下げ受給の上限年齢が75歳までに引き上げ」となったことに合わせて「60歳から75歳になるまで」に拡大されました。 これにより、現在は75歳まで運用が可能になります(掛け金の拠出はできません)。ただし、運用のみおこなう期間であっても口座管理料がかかる点に注意しましょう。 参照:受給開始時期の選択肢の拡大〈2022年4月1日施行〉(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html) iDeCoの受け取り方法には「年金方式」「一時金方式」、金融機関によっては「一時金と年金併用方式」の3種類があり、いずれかを選択できます。年金方式で受給する場合は「公的年金控除」、一時金方式で受給する場合には「退職所得控除」の対象となります。