「藤原が来ました!」日テレアナも思わず絶叫…24年前の箱根駅伝 “三つ巴の5区”の結末は? 天才に挑んだ“雑草ランナー”「勝ち筋はあると思って…」
“雑草ランナー”による大健闘にも見えたが…?
傍から見れば“中大のエース”藤原や“順大クインテットの一角”奥田といった学生界屈指のランナーを相手に、トラックの持ちタイムでは大きな差がある無名のランナーが最後まで食い下がったという見方もできた。しかも予選会上がりのチームが、まだ往路とはいえ3位でのゴールである。 だが、大村の胸の内を占めた想いは、満足感とは程遠いものだった。 「4年生だったからかもしれないですけど、とにかく最後の箱根は『抜かれないで終わりたい』というのはすごくあったんですよね。それが何番で来たとしても、相手が誰だろうと、自分より後ろからスタートしているわけですから。しかもこの年、僕は1回チームを投げだしている。そんな選手を信じて送り出してくれたのに、そこで抜かれたらもう……仲間に顔向けできないでしょう」 客観的に持ちタイムなどの実力を見れば、大村はこの年、100%以上の力を発揮できたと言っていい。もっと言えば、それ以上に「意地」や「根性」という目に見えないものまで可視化してくれたような、魂の走りだった。 ただ、それでも藤原というトラックでU20の日本記録を持つような “本物の天才”には敵わなかった。それこそが陸上競技という種目の美しさでもあり、残酷さでもある。大村は言う。 「まぁでも、そうあるべきなんですよ。実力があって、勝負が決まる。その実力の裏付けが、才能なのか努力なのかはわかりませんけど、強い選手が勝つのがスポーツなんです」 ただ……と大村は言葉を続ける。 「それでも僕はこの年、藤原に対しても奥田に対しても“勝ち筋”があると思っていた。箱根駅伝って、毎年200人以上があんなに注目される舞台で走れる。それだけ多くのランナーが日本トップクラスの選手とガチンコで勝負できる可能性があるわけです。他の競技だったらそんなことあり得ないですよね」 フラットレースの持ち記録で大きく上回るランナーを相手に、どうしたら勝てるのか。どんな戦略で挑めば、彼らを慌てさせることができるのか。どこでどう仕掛ければ、わずかな勝利の可能性を手繰り寄せられるのか。そうしてトップランナーに挑むチャンスがあること自体が、箱根駅伝の魅力なのだと大村は言う。 そしてそういった「格上にでも本気で勝負を挑む」向こう見ずなランナーの存在こそが、この年の大村のような周囲の心を動かす奇跡のレースを生むのかもしれない。
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