「藤原が来ました!」日テレアナも思わず絶叫…24年前の箱根駅伝 “三つ巴の5区”の結末は? 天才に挑んだ“雑草ランナー”「勝ち筋はあると思って…」
ゴールまであとわずか…背後に感じた気配の主は?
70年ぶりの法大往路優勝となるはずの芦ノ湖ゴールまでは、あと1kmちょっとのところだった。だが、そこでついに大村は背後に気配を感じた。 「最初は、一度突き放した奥田が元気になって追いついてきたんだと思ったんです」 きっとすぐに視界に順大の青いユニフォームが入ってくるのだろう。ただ、一度は突き放した相手でもある。向こうだってキツいはずなのだ。何とか……何とか粘ってやろう。 ところが、だ。 そんなことを思いめぐらせていた大村の視界の端にチラリと映ったのは、青ではなく白いユニフォームだった。 その時の大村の心境は、本人の言葉をそのまま借りればこうだったという。 「藤原かああああああっ」 実は大村は前年の5区で、1年生ながら区間賞に輝いていた藤原に箱根山中で抜かれた経験があった。そんな経緯もあって、この年こそは「絶対に抜かれたくない」という想いを抱いていた。 「ここまで粘ってきて、ここで今年もまた藤原に抜かれるのかと。それは心が折れましたね」 《藤原が来た! 藤原が来た! 藤原が来ました! 》 日テレアナウンサーのそんな絶叫を聞くまでもなく、足の運びがまるで違うことはすぐにわかった。藤原は追いすがる奥田を引き連れ、大村に一瞥もくれることなく抜き去っていった。 その藤原はレース後、テレビの取材でこう答えている。 「勝負は最後の平地に入ってからだと考えていました。大村さんは去年も上りで飛ばし過ぎてダメだったので、今年もそうなると思っていたので」 そのコメントを聞いた大村は「生意気なこと言う後輩だなぁ」と苦笑したというが、結果として「最後の平地で勝負」という藤原の目論見通りの展開になっていた。 結局、最後は粘る奥田を振り切って中大が37年ぶりの往路優勝。8秒差で順大が続く。 大村が短距離走者のようにトルソーを突き出してゴールテープを切ったのは、先頭の藤原がゴールしてから55秒後のことだった。 区間記録を見れば、藤原が73分51秒の区間2位。奥田は74分40秒の同3位で、大村は75分56秒の同7位だった。前年と同じ区間を走った藤原も大村も、ともに2分前後タイムが遅くなっていた。それほど異常な風の中での過酷なコンディションだった。 ゴール後は、強風にさらされ続けた寒さで、大村の体は凍えていた。救護スペースに運ばれ身体が温まってくると、じんわりと悔しさが湧いてきたという。
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