「森友学園」問題を論点ごとに整理する 坂東太郎のよく分かる時事用語
「実質200万円」不透明な土地売却の経緯
売却に至る経緯も奇妙なところがあります。森友学園は買った土地に小学校を作っています。2015年5月、財務局が森友学園側と10年間の「買い受け特約付きの定期借地契約」を結びました。「定期借地契約」とは大ざっぱにいうと「購入」ではなく「借りる」です。「買い受け特約付き」とは将来買い取るのが確実といった意味です。非常に珍しい契約形式とみられています。 契約を受けて、学園側は小学校建設をスタート。そして、2016年3月、借地契約から購入へ変更してほしいと要望しました。そのころ、学園は工事してみたら新たに大量のゴミが出てきたと国に伝えています。4月には国から学園側にこれまでのゴミ撤去や除染費として1億3200万円が支払われました。購入金額の1億3400万円を考えると実質的に200万円ぐらいで国有地を手に入れたともみなせます。不透明な売買契約を明らかにするため、欠かせない当時の交渉記録について財務省は「廃棄した」と国会で答えました。 それでもゴミを撤去しているというならばまだしも、国会審議で驚くべき指摘がなされました。掘り出したゴミなどの半分はグラウンドに埋め戻したというのです。もしそれが事実であれば、差し引いた約8億円を正しく使っていないばかりか、産業廃棄物処理法に違反する(不法投棄)可能性もあります 松井一郎大阪府知事は豊中市に再調査を依頼しました。埋め戻し問題について、学園側は「仮置きしていた」と反論。27日には豊中市が現地調査に入りました。 ちなみに政府は国会審議で、約8億円相当の「ごみの撤去」が実際に行われたかを確認する必要はない、と答弁しています。
安倍首相や政治家との関わり
森友学園問題は安倍晋三首相との関わりにも及んでいます。学園は小学校建設に当たって寄付を募りました。当初は「安倍晋三記念小学校」に名が使われていました。また妻の昭恵氏が小学校の名誉校長になることも決まっていたのです。首相は衆議院予算委員会で「抗議した」とし、籠池(かごいけ)泰典学園理事長を「教育者としていかがなものか」「非常にしつこい」と難詰して、夫人の名誉校長就任も辞したと明らかにしました。小学校のホームページからは夫人の顔写真付きのあいさつ文が削除されました。 それでも首相への疑念が消えないのは、籠池理事長が首相を支援する「日本会議」という団体の大阪支部幹部という点です。昭恵夫人はかつて「こちら(森友学園)の教育方針は大変、主人も素晴らしいと思っている」と発言したとされ、首相も「私の考えに非常に共鳴している方」と籠池理事長を持ち上げるような発言を予算委で行っています。首相は土地取引への関与を強く否定していますが、こうした首相との距離感を、国土交通省や財務省、私立小学校を認可する大阪府などが推し量って「激安払い下げ」「異例のスピード認可」へつながったのではないかという疑問が残っています。 特に普段は財布のひもを締めるのが仕事とやっきになる財務省の大盤振る舞いには首を傾げざるを得ません。 土地の売却交渉をめぐっては、新たな疑惑が浮かんでいます。森友学園側から自民党国会議員に国への働きかけを依頼したのではないかというものです。会見した鴻池祥肇参院議員は2014年に面会があったことは認めたものの、財務省や国土交通省への口利きなどは否定しました。政治家の関与があったのかどうかも国会で追及されています。