「森友学園」問題を論点ごとに整理する 坂東太郎のよく分かる時事用語
学園が掲げる教育方針や「ヘイト」行為
森友学園が大阪市ですでに経営する「塚本幼稚園」は一風変わった教育方針を掲げています。 「教育勅語」や「五箇条の誓文」を朗唱させたり伊勢神宮参拝も行っているのです。教育勅語とは1890(明治23)年10月に発布された明治天皇の「勅語」(天皇のお言葉)で、戦前の実質的な教育の最高法規に位置づけられてきました。1945(昭和20)年の第二次世界大戦敗戦により日本は連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に占領され、マッカーサー最高司令官からの「より自由なる教育」を求める指令(ほぼ命令に等しい)に基づいて教育全般を見直した際に問題ありとされ、1947年の教育基本法制定によって実質的な意味を失い、翌年の国会での「排除」「失効」決議によって公的にも指導性を持たなくなりました。「朕」(天皇の自称)が「臣民」(明治憲法下における日本国民)に「庶幾(こいねが)う」(切に希望する)と要請する勅語は、天皇が「国政に関する権能を有しない」とした日本国憲法に合致せず、学校教育への導入は憲法違反だという主張もあります。 別の問題として、学園の「ヘイトスピーチ」とも受け取れる一連の言動があります。 例えば保護者への配布物に「よこしまな考え方を持った在日韓国人や支那人」などと記載していたり、ウェブサイトで元保護者とのトラブルに絡んで「韓国・中国人等の元不良保護者」との文言を掲載したり。2016年に可決成立したヘイトスピーチ対策法は自民党も賛成しています。安倍首相も「一部の国、民族や文化を排除しようという、憎悪をあおるような過激な言動は極めて残念だ。決してあってはならない。日本国民、日本国の品格に関わる」と発言しています。 虐待疑惑も浮上しています。「犬くさい」「アルバム代を支払わない」などという理由で退園させられたとして保護者が大阪地裁に損害賠償を求める裁判を起こし係争中。 新しく設立される学園の「瑞穂の國記念小學院」は今年3月に大阪府が設置を認可し、4月から開校する予定です。さまざまな疑問が浮き彫りになる中、府が認めるかどうか分からなくなってきました。
--------------------------------------- ■坂東太郎(ばんどう・たろう) 毎日新聞記者などを経て現在、早稲田塾論文科講師、日本ニュース時事能力検定協会監事、十文字学園女子大学非常勤講師を務める。著書に『マスコミの秘密』『時事問題の裏技』『ニュースの歴史学』など。【早稲田塾公式サイト】