2024年、注目の展覧会12選。
●『塩田千春 つながる私(アイ)』大阪中之島美術館 5階展示室(2024年9月14日~12月1日)
現在、ベルリンを拠点に活動している塩田千春は大阪の出身。その大阪で16年ぶりに大規模な個展が開催される。彼女が取り組んでいるのは「生と死」という人間にとって根源的な問題だ。部屋じゅうに張り巡らされた赤い糸や黒い糸、舟や椅子、トランクといったモチーフは「生きることとは何か」「存在とは何か」といった問題を投げかける。 この個展は世界的なパンデミックを通じて私たちが否応なく考えることになった他者との「つながり」に、私(I)、目(eye)、愛(ai)という3つの「アイ」からアプローチするもの。それらは複雑に絡みあい、互いに影響し合いながら私たちと周縁の存在をつないでいる。インスタレーションを始め、絵画・ドローイング・立体作品・映像など多様な手法による作品が並ぶ。私たちが誰と、どのようにしてつながるのかを問いかける。
●『ルイーズ・ブルジョワ展』(2024年9月25日~2025年1月19日)
1911年にパリで生まれ、2010年にニューヨークで没したルイーズ・ブルジョワ。およそ1世紀という長い時間を生きた彼女の人生は激動の時代とともにあった。70年に及ぶキャリアで彼女は絵画、版画、彫刻、インスタレーションなど多岐に渡る作品を残している。 実家はタペストリー修復工房を経営し、住み込みの家庭教師と10年にわたり関係を続けた奔放な父と、それに耐える病弱な母のもとで育った。20歳のときに母が亡くなると川に投身自殺を図るも、父に救われている。こうした複雑な家庭環境によるトラウマはブルジョワの作品にさまざまな影を落とし、また創造の原動力にもなっていた。 この展覧会は日本では27年ぶりになる大規模な個展になる。とくに、これまで日本ではあまり展示される機会がなかった初期の絵画はその後の作品を予告する、興味深いものだ。また会場の〈森美術館〉がある六本木ヒルズのパブリックアート《ママン》を始めとする蜘蛛のシリーズには「母の愛」「治癒の力」といったテーマが読みとれる。「アートは心の健康を保証するもの」という言葉を残した彼女の生涯に改めて触れることができる。