観想に耽る、一人ひとりのための展覧会。「西川勝人 静寂の響き」がDIC川村記念美術館で9月から開催
活動初期にあたる1980年代から最新作まで、彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物約70点が作家自身の構成により展示される
運営元であるDIC株式会社が美術館運営を見直し、2025年1月下旬から休館となることが発表されたDIC川村記念美術館。休館前の最後の企画となる「西川勝人 静寂の響き」が9月14日~1月26日に開催される。 本展は、ドイツを拠点に活動する西川勝人(1949~)の国内美術館として初めてとなる回顧展。光や陰影に心を配り、空間に静寂な響きをもたらす作品約70点を展観し、彫刻をはじめ、写真、絵画、素描、インスタレーションなど多様な技法を用いながらも一定して静けさを保持し続ける西川作品の美学に迫る。 光と闇、その間の漠とした陰影に心を配り、多様な技法を用いた作品を40年以上にわたり手がけてきた西川。抽象的なフォルムをもつ彼の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえも吸い込んでしまうようにただ静かにある。これは、写真や絵画など、彫刻以外の制作においても、変わることのない最大の魅力である。 50年に及ぶ活動拠点はヨーロッパにあり、これまで国内で作品を見る機会は限られてきた。本展では、活動初期にあたる1980年代から最新作まで、彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物が作家自身の構成によって展示される。美術館前に広がる池には本展のために制作された新作の屋外彫刻《佐倉の月》が浮かぶ。光と陰影の追及が深遠な創作に結実している西川作品を、自然光・ 外光・ 照明・ 間接光と、様々な光のもとで紹介し、光と作品、空間との関係性を再考する。 会期中は、ゲストとともに、西川作品のもつ「ある視点」に注目しながら、担当学芸員と会場を巡るクロストークも開催される。ゲストは、三本松倫代(神奈川県立近代美術館 主任学芸員)、鈴木俊晴(豊田市美術館 学芸員)、南條史生(エヌ・アンド・エー代表)、保坂健二朗(滋賀県立美術館 ディレクター) など。ピアニストの江崎文武によるミュージアムコンサート 「静寂の響き」(仮称)も開催予定だ。 西川の作品に通底する静けさは、会場を凛とした清らかさで包みこむ。静寂が拡がり、淡々とした時が流れる空間で出会うのは、私たち各々の内なる静謐さである。日常から隔たった美術館において、観想に耽る一人ひとりのための展覧会だ。
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