ルノー「4(キャトル)」が復活! フレンチ・ブランドの再起なるか? パリ・モーターショー2024<大矢アキオ ロレンツォが紹介>
フレンチネスをもういちど
歴史を振り返ればフランスは、第二次大戦後に自国で高級車を十分輸出商品に育てられないまま世紀を超えてしまった。それはイタリアと対照的なところだ。したがってアルピーヌが成功すれば画期的なこととなる。同ブランドによれば、すでに2020年比で販売台数・販売拠点数ともに倍増し、ブランドバリューは7億ユーロ(1160億円)に達しているという。 2020年からルノー・グループのCEOを務めるルカ・デメオは1967年生まれ。ルノーを振り出しに、トヨタ、フィアット-クライスラー、そしてVWグループを渡り歩いてきた。フィアットではロングセラーとなった500の投入(2007年)を主導したほか、アバルト・ブランドを復活。VWではスペイン法人の「セアト」時代に新ブランド「クプラ」を立ち上げた。いずれもイタリアらしさや、created in Barcelonaを強調することで実績を上げた。 参考までに今回発表したルノー4 E-Tech 100%エレクトリックでは、写真でわかるとおりオリジナルの特徴が内外のさまざまな点で再現されているうえ、側面のバッジにはフランス国内モブージュ工場製であることが誇示されている。 ルノー4 E-Techエレクトリック、アルピーヌA390_βはいずれも2025年に発売される。昨今ステランティスの「フィアット」「ランチア」「アルファ・ロメオ」が、労働コストの安いイタリア国外に電動車の生産拠点を選んでいるのとは対照的だ。デメオによる、ブランドのナショナリティを前面に打ち出す作戦が、ふたたび実を結ぶかが注目される。 最後にもうひとつ、フランスで誕生した小さなコンストラクターの出展を紹介しよう。その名を「ドラージュ」という。もともとのドラージュは、自動車草創期である1905年創業。高級車として名を馳せたものの、戦後フランスにおける自動車大衆化の波に抗しきれず1954年その歴史に幕を閉じている。それを2019年、ローラン・タピ氏が再興したのが、今回パリにやってきた新生ドラージュである。参考までにタピ氏は、フランス屈指の実業家として知られた故ベルナール・タピ氏の子息だ。 タピ氏は「ドラージュは戦前のエレガンス・コンクールで、あのブガッティと双璧をなすブランドだったのです」と、そのプレスティッジ性を筆者に強調した。彼はこれまでグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードやル・マン・クラシックといったイベントでプロトタイプを公開してきたが、ようやく2024年から30台限定で生産を開始することになった。 過去のいくつもの例が示すとおり、一回途絶えた自動車ブランドを復活させるのは容易いものではない。しかし、フランス車の復権には、こうした華やかなハイパーカーが成功して注目を浴びるのも重要とも考えられるが、いかがだろうか? 在イタリア ジャーナリスト/コラムニスト/自動車史家 大矢アキオ ロレンツォ|Akio Lorenzo OYA 音大でヴァイオリンを専攻、日本の大学院で比較芸術学、イタリアの大学院で文化史を修める。『シトロエン2CV、DSを手掛けた自動車デザイナー ベルトーニのデザイン活動の軌跡』(三樹書房)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)など著書・訳書多数。シエナ在住。NHKラジオ深夜便ではリポーターとしても活躍中。イタリア自動車歴史協会会員。
文・写真= 大矢アキオ ロレンツォ(Akio Lorenzo OYA)