認知症本人の同意がなくとも入院治療をする方法【医療保護入院】とは?家族が困った場合の対処法を精神医療の調査、審査に詳しい弁護士が解説
医療保護入院とは?
医療保護入院とは、医師が入院治療が必要と判断したものの、精神疾患・精神障害の患者に入院する意思がない場合に、家族などの同意に基づいて行われる精神科病院への入院のことです。一般的な病棟への入院とは異なるため、誤解しないでいただきたいのですが、精神科病院への入院のうち、半数がこの医療保護入院なのです。 医療保護入院になる病名として一番多いのは統合失調症ですが、次に多いのは認知症です。先ほど述べた精神医療審査会の仕事の中に、医療保護入院の書類を審査するというものがあります。月に一度、大量の書類を審査していましたが、医療保護入院の書類に記載される病名は、統合失調症と認知症がほとんどでした。
医療保護入院の要件
医療保護入院は、患者本人の同意なく行われる半ば強制的な入院なので、軽々しく行うことはできません。医療保護入院をするための要件や手続きは、精神保健福祉法と呼ばれる法律に定められています。 医療保護入院には、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。 【1】精神保健指定医(精神保健に関する専門知識と経験を有する医師)による診察の結果、入院が必要と判断されること 【2】患者が精神障害者であること 【3】治療や症状の悪化を防ぐために、入院が必要と認められること 【4】本人の意思による入院が難しい状態であること 【5】家族などが医療保護入院に同意していること 【5.の家族などとは、主に次の人々です。 ・配偶者 ・親権者 ・直系血族(父母、祖父母、子ども、孫など) ・兄弟姉妹 ・後見人、保佐人 家族などの同意書が作成された後、精神科病院の病院長が決定したら、入院することになります。
医療保護入院とは?【まとめ】
認知症の介護には、介護する家族の身体的・精神的な負担が大きいとよくいわれています。特に、先ほども述べた認知症の周辺症状が出始めると介護者の負担がさらに大きくなります。その負担やストレスから高齢者虐待に発展してしまうことも珍しいことではありません。 認知症の周辺症状に対しては適切な治療を行うことでその症状が改善(軽減・緩和)されるといわれています。また、虐待という事態を避けるためにも、認知症の症状により日常生活に支障が生じるような場合には、医療保護入院による治療も検討してください。
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