実験的な作風で知られる作曲家、ジョン・ケージの意外な一面を知る【クラシック今日は何の日?】
クラシックソムリエが語る「名曲物語365」
難しいイメージのあるクラシック音楽も、作品に秘められた思いやエピソードを知ればぐっと身近な存在に。人生を豊かに彩る音楽の世界を、クラシックソムリエの田中 泰さんが案内します。
ジョン・ケージ『ある風景の中で』 ジョン・ケージの意外な一面を知る
今日8月12日は、アメリカの現代作曲家、ジョン・ケージ(1912~92)の命日です。 ミニマルミュージックをはじめとする実験的な音楽や、ピアノの弦にボルトや木片などの異物を挟みこんで演奏する“プリペアド・ピアノ”の発明、さらにはポピュラー音楽、環境音楽、文学、モダンダンス、演劇、美術、現代思想のほか、キノコ研究家としても活躍したジョン・ケージは、20世紀後半における最も影響力の大きな存在といえそうです。 この尖りまくったイメージのケージが、モダンダンスのために作曲した、キーボード・ソロ作品『ある風景の中で』の美しさには意表を突かれます。 これは、「音楽とダンスはどちらかが優位に立つのではなく、どちらかが先に作られるものでもない。対等な立場であるべきだ」という考えを持ち、振付家マース・カニングハムと40年以上にわたるコラボレーションを行ってきた、ケージならではの哲学の具現化なのでしょう。 “音楽のあるべき姿とはなにか”を考えさせられる名曲です。
田中 泰/Yasushi Tanaka
一般財団法人日本クラシックソムリエ協会代表理事。ラジオや飛行機の機内チャンネルのほか、さまざまなメディアでの執筆や講演を通してクラシック音楽の魅力を発信している。
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