「海・山・川のレジャー」で“遭難”…捜索・救助の費用を “個人で払わなければならない”ケースとは【弁護士解説】
夏休みも終盤を迎えているが、今年の夏も長引きそうだ。海、山、川へレジャーに行く人も多い。しかし、昨今の気候変動の影響による急激な天候の変化もあり、遭難するリスクには細心の注意が求められる。 【画像】夏期(7月・8月)の山岳遭難発生件数等の推移 そこで気になることの一つが、いざ遭難した場合の「捜索・救助の費用」の負担がどうなっているのかということである。自己負担しなければならないのか。また、海、山、川でどのような違いがあるのか。
海で遭難した場合の救護費用は「原則、無料」
まず、海で遭難して救助してもらった場合、その費用を支払わなければならないのだろうか。荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所代表)に聞いた。 荒川弁護士:「結論からいうと、救助の費用は負担しなくてよいことになっています。 海のレジャーは、泳ぐことと、船で遊ぶことの2つに大別されます。 大雑把にいえば、岸近くで泳いでいて溺れた場合は『消防の水難救助隊』(119番)、沖で船遊びしていて遭難した場合は『海上保安庁』(118番)が救護活動を担当するというイメージです。 ただし、これらの管轄の境目は厳密に分けられてはいません。臨機応変に活動しており、互いに協力し合うこともあります。 このほかに、民間のボランティアを束ねる『日本⽔難救済会』もあります。 消防と海上保安庁の救護活動は法律に基づいて行われています。消防であれば『消防法』、海上保安庁であれば『海上保安庁法』です。そして、それぞれの法律には、救助の対象者に救助費用を請求できる旨の規定はありません。 したがって、無償とするほかありません。 日本水難共済会による救助は、前述のとおりボランティアなので、無償です」 有償となる場合は一切ないのか。 荒川弁護士:「近隣の漁協や漁師、マリーナの救助艇等に救助を依頼した場合には、費用がかかることがあります。 民間人でボランティアでもないうえ、救助は本来の業務ではないからです。 海上保安庁や消防に救助してもらった場合に費用を払わなくていい理由は、あくまでも、国民が危難に遭った場合に救護活動をすることが、法律上当然の業務だと考えられているからです」