「海・山・川のレジャー」で“遭難”…捜索・救助の費用を “個人で払わなければならない”ケースとは【弁護士解説】
山で遭難したら「めちゃくちゃお金がかかる」といわれる理由
山・川の場合はどうか。たとえば「海で遭難したら救助費用はかからないが、山や川で遭難したら多額の救助費用を自己負担しなければならない」などの話がまことしやかに語られることがあるが…。 荒川弁護士:「山・川の場合、公的機関だけが救助を担当する限りは、原則としてお金はかかりません。 山で遭難した場合は、主に消防の『山岳救助隊』や警察の『山岳警備隊』が救助を担当することになります。川で遭難した場合は消防の『水難救助隊』や『山岳救助隊』が救助を担当します。地元の消防団が出動することもあります。 消防による救助活動は前述のとおり『消防法』を、警察の救助活動は『警察官職務執行法』を法的根拠として行われます。 いずれも、救助の対象者に救助費用を請求できる旨の規定はありません。また、法律上の業務の一環として行われるので、費用を請求されることは基本的にありません。 ただし、例外はあります。埼玉県で2018年から、一部の山岳地帯について、防災ヘリコプターが救助に出動した場合に、救助対象者にその手数料を負担させる条例が施行され、話題になりました(埼玉県防災航空隊の緊急運航業務に関する条例)。 手数料は飛行時間5分ごとに8000円と定められています。たとえば1時間ヘリが飛んだら48万円かかることになります」 ヘリコプターが出動するような重大なケースは別として、このように、消防や警察といった公的機関が捜索・救助を担当した場合、基本的には対象者が自己負担を求められることはないということである。 では、なぜ、山で遭難した場合に多額のお金を払わなければならないと言われているのか。 荒川弁護士:「山での遭難については、消防や警察に加え、地元の山岳会や山岳遭難対策協議会、山小屋の関係者など、民間の団体や個人が救助活動を担当することが多くなっています。 その結果、救助対象者が費用を請求されるケースが多くなっているのです。 なぜなら、それらの民間団体や個人のほうが、現地の地理や天候といった事情について消防や警察よりも詳しく把握していることが多いからです。 民間の救助隊員が出動した場合には、もろもろの経費に加えて、隊員に支払う日当もかかります。日当は地域にもよりますが、隊員1人あたり2万円~3万円です。 また、1人だけ派遣するということは考えられません。最低でも10人くらいでしょう。たとえば日当1人3万円で10人で捜索活動が5日間行われた場合、日当だけでも150万円かかります。それ以外にも諸経費がかかります。 加えて、もしも民間のヘリコプターに出動してもらえば、それだけで数百万円になることも考えられます」