「海・山・川のレジャー」で“遭難”…捜索・救助の費用を “個人で払わなければならない”ケースとは【弁護士解説】
無謀な行動には「自己責任」を問うべき?
救護活動が公務として行われる場合、そこにはある程度のコストがかかる。その財源は、突き詰めれば私たち国民が支払った税金である。 そこで、あくまでもケースバイケースという前提で、救助対象者に費用の全部または一部を支払わせることはできないか。 たとえば、救護活動が難航して多大な費用がかかった場合で、かつ、対象者が自ら敢えて危険な場所にレジャーに行った、あるいは警告が発せられたのに引き返さなかったなどの事情があるならば、費用の全額または一部を自己負担させるべきだという議論が考えられる。 少し古い事件だが、1999年に神奈川県内の川の中州でキャンプしていた集団が、ダムの管理職員や警察官のたび重なる警告を無視した結果、増水した川の中に取り残されて子ども4人を含む13人が死亡した「玄倉川水難事故」がある。 救助された男性が、救助隊や地元のボランティアに対して暴言を吐くなど理不尽な対応をしていたことを覚えている人も多いだろう。この事故では救助活動に4800万円の費用がかかり、地元自治体が全額を負担したと報道された。 少なくとも、このような場合には、費用の負担を求めるべきではないか。 荒川弁護士:「そのような考え方も理解できなくはありません。しかし、どのような人であれ、一般市民が遭難した場合には、消防や警察は業務上、その人を救護する法的義務を負っているという建前を崩すことはできません。 もっとも、救助活動が本来の業務の範囲を超え、過大な負担となった場合には、対象者に捜索・救助の費用の負担を求めるべきだという理屈は、成り立ちうるかもしれません。 しかし、そうだとしても、対象者に費用を自己負担させるには、法律や地方公共団体の条例による根拠が必要です。また、要件や支払わせる手続きも詳細かつ明確に定めなければなりません。 日本はあくまでも法治国家だからです。 具体例として、先ほどの埼玉県でのヘリコプターが出動した場合の費用負担に関するルールについて説明しましょう。 対象エリアが限定されており、時間ごとの手数料の額も明確です。また、正当な理由があって立ち入る人については適用を除外したり、あるいは請求額を減免したりする定めもおかれています。 なお、手数料の徴収の手続きについては、もともと『埼玉県手数料条例』があります。 もし、最低限、このような法的根拠と詳細な要件、手続きを定めておかないと、ただ『けしからんから負担させろ』ということになりかねません」