「海・山・川のレジャー」で“遭難”…捜索・救助の費用を “個人で払わなければならない”ケースとは【弁護士解説】
「救助してくれなくてもよかった」では済まない
もう一つ、問題がある。多くの場合、救助活動は対象者の求めがなくても行われる。では、たとえば、救助対象者が「救助活動を希望しなかった」「そんなに多額の救助費用がかかるなんて承知していない」などと主張して、救助費用を拒んだ場合はどうなるのか。 いかにも筋が悪く、品性が疑われるといわざるを得ないが、このような主張をする対象者がいないとは限らない。 荒川弁護士:「法律上、そのような身勝手な主張は認められません。 民法に『事務管理』という規定があります(民法697条~702条)。これは契約や法令上の義務がなくても、本人のために『事務の管理』を行った場合についての規定です。 本人に頼まれなくても捜索や救助活動を行うのは、この事務管理に該当します。そして、事務管理を行った人は、『本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる』と規定されています(民法702条)。 民間の救助隊等が救助のために出動したり、民間のヘリコプターが出動したりした場合は、その費用を民法702条に基づいて本人に請求できます。 救助隊員等が捜索・救助活動中にケガをした場合も、この事務管理の費用として請求できる余地があります」 以上を踏まえ、荒川弁護士は、とりわけ山のレジャーの場合、捜索・救助費用がかかる可能性に備え、民間の登山保険に加入すべきだと指摘する。 荒川弁護士:「『娘さんよく聞けよ 山男にゃ惚れるなよ』という古い歌があるように、登山には危険がつきものです。 特に、登るのにそれなりに装備が必要な山の場合、ただでさえ地形が険しいうえ、天気が変わりやすいので、遭難の危険性を完全に排除することは不可能です。 遭難して命びろいしたのに、何百万円の債務を負ってしまったのでは、浮かばれません。 民間の登山保険で、遭難した場合の捜索・救助の費用をカバーしてくれる『遭難捜索費用補償』『救援者費用等補償』があるものに加入しておくことをおすすめします」
弁護士JP編集部