忘れ物で連帯責任、普段は「厳しかった」 選手権を2度経験、OB見出す「価値」【見解】
【専門家の目|太田宏介】高校サッカー選手権の「価値はものすごく高い」
第103回全国高校サッカー選手権大会は、12月28日に開幕を迎えた。麻布大学附属渕野辺高校サッカー部の一員として、2度の出場経験のある元日本代表DF太田宏介氏は「夢の舞台」「スターが生まれる大会」と、自身のかけがえのない経験を明かした。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・金子拳也) 【実際の映像】高校生が大技「身体能力高すぎ」 約50mの飛距離を出したハンドスプリングスローインの決定的瞬間 ◇ ◇ ◇ 今回103回目となる高校サッカー選手権。太田氏はFW小林悠(川崎フロンターレ)、お笑いコンビ「ぺこぱ」のシュウペイなどの面々と第83回、84回大会に出場している。「高校入学した初日に、全国大会出場する選手権出場するという目標を書いた紙を部屋に飾りました。3年間ずっとそれを見続けて意識して取り組んでいましたね」と懐かしんだ太田氏は、大会の存在価値や思い入れを改めて語る。 「悠と刺激し合って、いいライバル関係でした。普段の練習は厳しかった思い出が多いですね。もう矛盾だらけで(苦笑)。誰か何か忘れ物をしたら連帯責任で外周というのも日常茶飯事でした。それでも正月の高校サッカーは全国で試合中継をテレビでやってくれますし、高校生にとってあんな嬉しいことないと思いますね。そう考えると、高校サッカー選手権の価値はものすごく高い」 プロになることを夢見た高校時代の太田氏も、死に物狂いで練習に食らいついた。本戦では2年連続の初戦敗退となり「ものすごく悔しかった」と当時を思い起こしていた。 一方近年は、大学まで進学してからプロになる選手も増えている。川崎からイングランド1部ブライトンに渡り活躍中の三笘薫も筑波大学を卒業してからプロの道へと入った。「高校年代の子たちと話すと、プロになりたいけど、焦ってないというか……。プロになっても出られないのなら、環境の良い大学でしっかりと土台作ってから挑みたいというマインドを持った選手が増えた気がします」と、時代の流れを指摘する。 「去年(FC)町田(ゼルビア)で現役だった頃にも、大学生とトレーニングマッチを何度か行いました。本当に前に比べて、今日プレーの強度のところもそうですけど、かなりレベル上がっているなと思います」 それでも太田氏は、現在の高校サッカーに期待もかける。「平山相太さんや、大迫勇也のような化け物がもっともっと出てきてほしいですね。また、大学も含めユースも含め、選択肢が増えるのはすごくいいこと」と、日本サッカーがさまざまな形で成長している様を喜んでいた。 [プロフィール] 太田宏介(おおた・こうすけ)/1987年7月23日生まれ。東京都出身。FC町田―麻布大学附属渕野辺高―横浜FC―清水エスパルス―FC東京―フィテッセ(オランダ)―FC東京―名古屋―パース・グローリー(オーストラリア)―町田。Jリーグ通算348試合11得点、日本代表通算7試合0得点。左足から繰り出す高精度のキックで、攻撃的サイドバックとして活躍した。明るいキャラクターと豊富な経験を生かし、引退後は出身地のJクラブ町田のアンバサダーに就任。全国各地で無償のサッカー教室を開校するなど、現在は事業を通しサッカー界への“恩返し”を行っている。
FOOTBALL ZONE編集部