トランプ再登場は「脱炭素」にとってどこまでリスクか?2025年に迎える瀬戸際
多くの分野で2024年の総括が報告される中、喫緊で最大の課題の1つである温暖化防止は、いくつものリスクを抱えたまま年を越そうとしている。記録的な高温に見舞われた2024年、将来の数的な目標である「気温上昇1.5℃以内」がほぼ確実に破られる見通しである。一方、再生可能エネルギーの電力が飛躍的に拡大した欧州では、風が吹かず太陽も出ない「暗い凪(なぎ)」が年末にかけて長期的に発生し、電力市場が一時的に高騰した。そして、温暖化自体を否定するトランプ政権が年明けに再登場する。2025年、世界の脱炭素化はどうなるのか。本連載の最終回として、これから迫り来るリスクと対応策について解説する。 【詳細な図や写真】図2:アイルランド共和軍(IRA)を契機とした米国国内における脱炭素関連投資の増加(出典:GX 実行推進担当大臣資料、「わが国のグリーントランスフォーメーションの加速に向けて」2024年10月31日)
初めてプラス1.5℃越えを記録する可能性が濃厚な2024年
図1は、主要な研究機関などによる2024年の世界の年間平均気温の予測を示している。この予測は、気候に関する科学や政策の最新動向を扱う英国のWebサイト、Carbon Briefがまとめたものである。 温暖化防止の重要な目標である、産業革命前からの地球の気温上昇1.5℃(グラフ中央の点線)について、5つの研究機関のうち3つがこの目標を越えると予測している(中心の丸の位置)。また、平均値(1番右の黒)でも95%の確率でこの目標を突破すると見られている。 高い確率で目標数値内に収まるとするのは、プラス1.44℃を予測するNOAA(青丸)のみである。Berkeley Earth(茶丸)は、昨年すでに1.5℃を越えており、今年の予測はプラス1.66℃に達している。後述するが、トランプ次期米国大統領が、そのNOAAの解体を明言していることは、皮肉であり、何か象徴的でもある。 いずれにせよ、「今世紀末での気温上昇の上限」が数十年も早く崩れ去ったことは衝撃的である。ただし、それでも「まだ間に合う」とする団体や機関も少なくない。各国が年明けの2月までに提出を求められている新しいCO2削減目標(NDC)に、この危機感をどこまで反映できるかが重要な焦点となる。