日本に定着したハイブリッド車、世界的な再評価へ!「政策頼み」で根付かない「EVの最新事情」が見えてきた
各地域の電気自動車の詳細
次に電気自動車の販売台数と保有台数を実数で見てみましょう。 ここでトップに立つのが中国です。2023年に世界で販売された電気自動車は約1400万台ですが、このうち中国が60%で810万台、ヨーロッパが25%で約330万台、アメリカは10%で約139万台がそれぞれ販売されました。 また、電気自動車は世界ですでに約4000万台が保有されていますが、このうち中国では約2190万台を保有。世界の電気自動車のうち半分以上が中国に存在していることになります。それに続くヨーロッパは28%の1120万台を、アメリカは12%の480万台を保有し、この2か国1地域で世界全体の95%近くを占めていることになるわけです。 ちなみに日本はといえば、2023年の電気自動車の販売台数は約14万台で世界のちょうど1%。保有台数は約54万台で、世界の1%強にとどまっています。
各地域の電気自動車の詳細
ここからは、電気自動車の普及が著しい各地域の詳細を見ていくことにします。 まず中国です。中国政府は新車販売における新エネルギー車(NEV)の割合を2027年までに45%まで引き上げることを目標としています。もともとは25年までに20%以上としていましたが、早々にこの目標を達成してしまったためにこの目標値が23年に引き上げられたのです。その結果、その割合は30年までに40%以上、35年までに50%以上にまで引き上げる目標が設定されています。 ただ、この目標を達成できるかは否かはわからない状況です。というのも、目標達成のために2010年から続けられてきた電気自動車の購入補助金を22年末に完全終了したからです。折しも不動産不況による景気悪化の影響も受け、新車販売が鈍化。そのため、中国のEVメーカーは過剰生産状態となり、周辺国やヨーロッパなどへの輸出に力を入れている状況にあります。 ヨーロッパはどうでしょうか。欧州連合は2035年までに合成燃料(e-fuel)車を除いて、ガソリンやディーゼルを使う内燃機関搭載車の新車販売を禁止する方針を掲げています。つまり、電気自動車シフトを積極的に推進してきたわけですが、2024年1月~9月の累計で見ると新車販売におけるEV(BEV)のシェアは約14%の約143万台にとどまり、前年比で普及率・販売台数で減少する結果となりました。 その要因は2020年以降、ヨーロッパ全体で実施されてきたEV購入支援策の厳格化や打ち切りが相次いで実施されたことが理由です。こうした支援策の変更で販売台数が鈍化するあたりは、EV市場そのものが根付いていないことの証しなのかもしれません。 一方でアメリカは意外にも電気自動車の販売が好調です。2022年末時点でのEV新車販売台数比率は、BEVとPHEVを含めて約8%。前年比では1.7倍の伸びとなり、販売台数では約36万台も増えました。見逃せないのがBEVの大幅な増加で、47万台から80万台へと急増。さらに23年になると第一四半期には約8.6%にまで上昇し、それは前年同期比で45.4%の増加となり、BEVだけに絞っても48%増加しているのです。(データ:国際エネルギー機関) ただ、これが今後も続くかは不透明です。アメリカでもこれまで電気自動車に対する税額控除がありましたが、それにも関わらず2024年に入ってその伸びが鈍化しているからです。一方でこの優遇策を廃止することを示唆していたトランプ次期政権でしたが、テスラ社のイーロン・マスク氏の支援を受けたことで、この考えは留保している状況にあります。HEVの販売が伸びている状況もあり、今後、これがどう展開していくのか目が離せない状況にあるといえるでしょう。 最後に日本です。日本自動車販売協会連合会によれば、2020年の電気自動車の新車販売比率は0.6%(約1.5万台)だったのに対し、21年は0.9%(約2.1万台)、22年は1.4%(約3.2万台)となり、23年には1.7%(約4.4万台)にまで上昇。さらに欧米などでEVとしてカウントされるPHEVやFCEV(燃料電池車)を含めると、2023年には3.6%(約9.7万台)となり、電動車の新車販売比率は日本でも着実に上がってきています。 なかでも日本のEV販売比率向上に大きく貢献したのが軽EVである日産「サクラ」や三菱「ekクロスEV」です。全国軽自動車協会連合会の資料によれば、2023年の販売台数は軽自動車全体の2.2%(約4.4万台)となり、電動車の普及底上げに大きく貢献したといえるでしょう。また、中国のBYDや韓国のヒョンデがBEVで日本市場に参入したことも刺激になったはずです。 しかし、2024年に入ると日本でも販売台数はマイナスに転じます。2024年11月時点でEVとPHEVを合わせた新車販売比率は2.98%で、前年同月の3.21%から減少していたのです。2026年以降にトヨタやレクサスがEVの投入計画を明らかにしていることから、それが販売増につながる期待もありますが、新車が出なければ途端に販売台数が急減する状況は、ハイブリッド車(HEV)の使い勝手の良さを知り尽くした日本ならではの背景があるといえるのかもしれません。